近自然登山道工法

合同会社 北海道山岳整備

法面浸食防止および通路の確保。アーチ工の応用パターン。
ここhttp://hokkaido.env.go.jp/blog/article.php?blog_id=659にも詳しい解説があります。

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近自然工法
業務内容
施工例

固定されていない木道。木道の下を水が流れるという発想だが、実際は枯葉、枯れ枝などが詰まり流れにくい。また、雪解け時期や大雨の時には木道事態が浮き流されている。秋に施工し、翌年春には崩れてしまったものも多く、この木道は再検証しなければならない。

固定されていない飛び石工。本来は深く埋設し、しっかりと固定しなければならない。登山者にとって危険である。

これはあまりに規則正しい石組みになっている。本来の渓流にあるような石組みではなく、ただの石階段になってしまっている。また、左右の石は大きくする、石組みの天端(上面)は平にしない、などのセオリーも守られていない。


■石組工  ■導流水制工  ■木柵・木道工  ■課題ある施工例

■近自然登山道工法 施工事例


木道を中央に施工せず、水の通り道を確保する。木道の下にも空間をつくり水の流れを妨げないという考え。傾斜の緩い場所では効果がある。

大雪山(愛山渓)
大雪山(裾合平)

従来工法と似ているように見えるが、正しく施工できると、浸食への対応力は全く違ってくる。

階段工および床固め工。大きく掘れた水路に階段工を設置。浸食は起こりにくくなったが、石階段を使う登山者は少なく、左の踏分道はそのまま通路となっている。

床固め工。道幅の広い場所では、水の流れる箇所を中心に施工する。登山者には石階段となる。

階段工および床固め工。段差と水の溜まるプールが連続することからステップ&プール工とも言われる。

大雪山(愛山渓)

階段工およびステップ&プール工。みず道と人道が分かれ、歩きやすく浸食も起こりにくい。

階段工および床固め工。水の流れに配慮し、法面が崩れないように施工している。

課題ある施工例
木柵・木道工
大雪山(裾合平)

階段工および根系裸出防止工。階段は段差を均一にせず様々な足場を確保している。

大雪山(沼ノ平)

大雪山(愛山渓)

護岸工。2tクラスの巨石を使用した人力でできる最大限の施工。護岸の中には水を撥ねる水制工も施工されている。この施工は、福留脩文氏(西日本科学技術研究所)小松総一氏(古式土佐積石垣)の指導の下、平成17年に大雪山(愛山渓)で研修施工として行われた。

施工前後。同じ場所である。施工時に、中央や脇にあった植物群をすべて取り除き平らにしたようだ。確かに設計図には木柵を規則正しく配置するようにあるが、ここまでしてしまうと「現状を維持し、浸食を止める」という近自然工法の理念から離れているように思う。

大雪山(愛山渓)
大雪山(裾合平)

アーチ工。大きな石はチェーンブロックで動かす。徒渉地点に施工すると増水時は飛び石状になる。

大雪山(愛山渓)

床固め工を上流から撮影。石組みが向きを変えつつアーチ状になっている。石組みの基本形の一つ。

北海道における近自然工法は、平成17年から現在まで続く環境省直轄工事の他に、試験施工や簡易補修が行われています。施工者も建設業者や登山道パトロール員など様々な人たちが関わっています。
地域も大雪山をはじめ、利尻山、トムラウシ山などがあり、さらに広がりつつあります。
しかしながら、近自然登山道工法はまだまだ始まったばかりで、設計・施工ともに完成した工法にはなっていません。ですから見事な成功例の傍ら、数箇月で崩れ去った失敗例も数多くあります。
その記録の中から施工事例を抜粋し、紹介していきます。

利尻山
■近自然登山道工法にはこのような課題も多々ありますが、正しく施工された時は素晴らしい効果があります。平成17年に大雪山で始まりましたが、まだまだ完成した工法にはなっていません。これからは失敗を検証し、正しい施工をしていくことが望まれます。そのためには、トライ&エラーに基づいた施工管理システムや、管理者だけでなく、登山者も交えた継続した検証会などが必要です。

落下水による洗堀が激しい。上部に土砂が堆積しているが、施工したことにより元々の地盤が低下した可能性がある。このままではいずれ石組み自体が崩れる。また、登山者にとっても危険な段差に見える。

石を並べただけの施工。上流部には土砂が溜まり土留めになることもあるが、正しい理論や施工方法を理解していない時は、左右の法面が浸食されたり落下水により洗堀されたりと、浸食が拡大するときがある。

石組みと石組みとの間に、常に水溜まりが出来てしまっている。本来は飛び石工を入れたり、石組み上部で排水をするなどの施工が必要。

大雪山(愛山渓)
導流水制工  浸食原因である水の流れを、登山道外へ排出する方法

ステップ&プール工。施工直後から、石組みの背面には土砂が溜まり土留めの役割も果たしている。石組みは向きや高さが一定ではなく変化させてあり、水流による浸食防止や景観に配慮した施工になっている。

大雪山(裾合平)
大雪山(沼の平)

石の間が深く掘れていた場所。周囲と調和し、施工した場所だと気づく登山者はほとんどいない。

斜面をつくり水の流れを変化させる方法もある。浸食箇所をよく観察することが重要。

大雪山(愛山渓)

正しい施工ができると、施工直下の一定区間は水の浸入がほぼ無くなり、水流による浸食が激減する。

大雪山(愛山渓)

上の施工箇所を上流から見ると、施工後は水の流れが登山道へ入っていないのがわかる。

石組工
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*これらの施工例は平成17〜22年に大雪山・利尻山で行われた環境省直轄工事・研修施工・維持管理業務の中から抜粋しています。

利尻山

従来工法との違いは、水の蛇行に合わせ木柵の向きを変化させる。水が通るための切り欠きを付ける。左右法面への貫入を深くとる。落下水による洗堀防止のため水たたき石を設置する。など様々にある。

大雪山(裾合平)

大雪山(沼ノ平)

木の向き、角度、高低によって水が流れていく方向を決める。微妙な変化に気をつけなければならない。