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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第127杯「ドラマと司法試験」

司法試験が登場するドラマとしては、1996(平成8)年のNHK連続テレビ小説「ひまわり」を思い出しますが、「ひまわり」では、松嶋菜々子演じるヒロインの司法試験受験の様子はあまり描かれておらず、合格後の司法修習生や新人弁護士としての生活を中心に描いています。当時、湯島から和光に移転したばかりの司法研修所やヒロインの実務修習地(福島)でロケを行うなど、司法修習の様子が詳しく描かれており、奇しくもこの年は、受験回数3回以内の者の優先合格枠が導入されたこと、銀行・証券会社が破たん、世の中の不景気もあって、司法試験人気が高まっていたと思います。当時、ぼくは受験生で、気分を害するので「ひまわり」を視ないようにしていました。

日本テレビでも1991(平成3)年秋に放映された「101回目のプロポーズ」でドラマ終盤に武田鉄矢演じる主人公が一発逆転を狙って司法試験を受験する場面がありますが、あえなく失敗します。司法試験の再現や考証が甘く、これで主人公が合格していたら、日本テレビに抗議文を送付しようと思っていました。

「男はつらいよ」でも司法試験受験生が寅さんの恋敵となる作品「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」(1985(昭和60)年、第35作)があります。平田満演じる司法浪人(東大卒?)が司法試験に挑戦するものの、なかなか合格せず、樋口可南子演じるマドンナと恋に落ちます。法曹はあきらめて教師となりますが、最後はライバルのはずの寅さんがアドバイスして、恋を実らせます。山田洋次監督は東大法学部卒で、その関係からか、この作品では東大本郷キャンパスでのロケも行われています。

「ひまわり」から28年ぶりに2024(令和6)年4月から、NHKの連ドラ「虎に翼」で司法ものを放映しています。伊藤沙莉演じるヒロイン猪爪寅子のモデルになったのは三淵嘉子氏で後に、女性初の裁判官となった人物です。史実として昭和13年の高等文官試験司法科に三淵氏他2名の女性が合格しており、ドラマでもそれらしき人物が登場しています。試験のシステムもぼくの受験していた旧司法試験の論文式・口述式とほぼ同じ、口述式に失敗したら翌年は口述式から受験できることも同じで、少し驚きました。登場人物のキャラを現代風にアレンジしていますが、それ以外は正確に真面目に作っているという印象で、シリアスな内容のため、視聴率は上がらないのではないかと心配しています。