メディア旭川 連載記事
世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』
第123杯「現役か浪人か」
最近の大学受験は現役志向が強く、浪人する者は減っているそうです。そのためかワンランク落として受験する安全志向の傾向があるようです。
ぼくの場合、高校に入ってからは、数学・物理が暗記だけでは立ちいかなくなり、高3からは文系に転向し、暗記に頼る勉強方法は変えませんでした。それと高校に入学した年から、いわゆる社会科の科目に、「現代社会」という広範囲で総合的な出題がなされる科目が追加され、必修となりました。つかみどころのない科目で差がつきにくい科目だったと記憶しています。現代社会が必修となったおかげで、まんが日本史や偉人伝、人名辞典などを読んでいるうちに、自然とかなり細かい知識が身についていた日本史を選択する機会を逸し、大学受験に使えませんでした。せっかく文転したにもかかわらず苦手の数学を重視する国立大学を志望しました。そして、「学問に王道なし」を「網羅的に勉強すること」と考え、各科目を頭から均等に精力を注入して勉強し、重要部分もそうでない部分も同じように時間を割いていました。極めつけは、志望校の出題傾向の分析をしないどころか、過去問は1回出題されたから、もう出題されないと判断し、過去問演習を軽視し、出題が乏しい分野に精力を傾けていました。
こうした選択ミス、誤った方向への努力を重ねた結果、浪人しても国立大学の受験には失敗し、中央大学に進みました。そして、就職せずに司法試験を受験することにし、大学受験時の勉強方法を司法試験受験でも行った結果、大学卒業後10年浪人して合格しました(途中で勉強方法を見直して正しい方向に修正できたので、10年で済んだと思っています。)。それでも人生、何とかなっています。現役合格に越したことはないですが、浪人しても、以後の人生、不利になる訳ではありません。
人生何が幸いするかわかりません。ぼくの場合、国立大学受験に失敗して、伝統的に司法試験を目指す人も合格者も多い中央大学に進んだことが、司法試験をあきらめずに続行し、長くかかりましたが合格できた要因と思っています。他大学に進んでいたら、どうなっていたかわかりません。人生1度しかないので、第1志望の進路や職業を早々とあきらめてしまうのもどうかなと思います。いろいろ事情はあると思いますが、大器晩成、浪人した分は長生きするくらいの気持ちで初志貫徹するのも良いと思います。