メディア旭川 連載記事
世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』
第122杯「接見駅伝」
弁護士の業務の一つに当番弁護というものがあります。犯罪の容疑をかけられて逮捕された者(被疑者)が無料で弁護士を呼んで1回相談できるというものであり、各弁護士会で運営しています。旭川弁護士会の場合は、旭川市内と旭川市外の当番弁護があり、市内当番は1日ごとに、市外当番は1週間単位で担当弁護士を割り当てています。旭川市外の当番弁護の場合、北は稚内までカバーしているため、稚内で刑事事件が発生すれば、被疑者と面会(接見といいます)するために稚内の警察署まで行かなくてはなりません。原則、当番弁護の要請があってから24時間以内に接見に行かなければならず、稚内の場合はJRを使うと午前9時発に乗車しないと日帰りできないため、車を運転して行きます。今年は年明け早々に市外当番が割り当てられ、稚内から当番弁護の要請があったので初仕事が稚内での接見ということになりました。片道241㎞あり、さながら駅伝の感覚で5区間に分割して、各区間ごとに目安となるタイムを設定して、スタミナを配分して運転しています。
1区 事務所前~士別剣淵インターチェンジ(50㎞)。
2区 士別剣淵インターチェンジ~道の駅びふか(53㎞)。コンビニ、給油所も点在し、途中に高規格道路である名寄・美深道路があるので、あまりスタミナを消耗しません。逆に、天候不良等で、ここで苦労すると先が思いやられます。
3区 道の駅びふか~道の駅なかがわ(53㎞)。道の駅おといねっぷが旭川・稚内間の中間地点であり、道の駅おといねっぷ以降は、沿線に集落がありません。高規格道路なしの区間であり、道路が蛇行している箇所も多いので、冬期間に凍結路面を通行する場合は細心の注意が必要です。また、雪で視界が悪い時は非常に危険です。命を危険にさらしてまで接見に行くのは割に合わないので、引き返したことも実際にあります。
4区 道の駅なかがわ~幌延インターチェンジ(35㎞)。高規格道路なしの区間であり、コンビニはありません。疲れが出てくるため、幌延インターチェンジになかなか到達できない感覚があります。
5区 幌延インターチェンジ~稚内警察署(50㎞)。ここまでくれば一安心ですが、ぼくの場合は、なぜか、この区間で天候不良に見舞われることが多いです。
復路では、危険区間である往路3区を夜間に走行することを避けるため、接見終了後、日暮れ前に帰途につくようにしています。