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北海道新聞 連載記事『朝の食卓』

しみじみ

北海道新聞 連載記事『朝の食卓』


新型コロナウイルス感染防止のため、東京都が呼び掛ける「STAY 朝 HOME (ステイホーム=ウチで過ごそう)」生活を送る日々です。当たり前だった日常生活のありがたみを、しみじみ感じます。

この「しみじみ」という言葉、「心の底から実感するさま」という意味です。歌手八代亜紀の代表曲「舟唄」を英訳する際、歌詞に登場する「しみじみ」を表現する言葉が英語にはないので、発音そのままに「SHIMIJIMI」としたそうです。

似た言葉に「つくづく」があります。「物事を深く考え、何かを痛切に感じるさま」という意味です。「しみじみ」とあまり変わらないようですが、舟唄の場合、「しみじみ」に 代えて「つくづく」を使うのでは情感が伝わらず、演歌ではなくなってしまう気がします。

そこでぼくは、演歌的か否かを基準に「しみじみ」と「つくづく」を使い分けることを思いつきました。すなわち、演歌は日本独特のものですから、日本的な人情や切なさ、寂しさ、懐かしさの意味合いが大きい場合が「しみじみ」、それらの意味合いが小さい場合が「つくづく」と考えます。「昭和の歌をしみじみ聴く」「コロナウイルスはつくづく怖いと思う」といった具合です。また、「しみじみ飲む」のは、もっぱら日本酒でしょうか。

外出自粛が続いていますが、ぼくは「SHIMIJIMI STAY HOME」、ウチでしみじみ過ごしながら、元の日常生活が戻る日を待っています。