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北海道新聞 連載記事『朝の食卓』

雪国

北海道新聞 連載記事『朝の食卓』


旭川弁護士会と山形県弁護士会は、雪国で小規模会同士なので姉妹弁護士会として交流し、会の運営等について情報交流しています。協議会を開催し、互いに行き来しており、昨年は旭川弁護士会の会員が、山形市を訪れました。

ぼくも参加しましたが、別の目的がありました。それは、山形県の酒田市にあるバー「ケルン」を訪れることです。この店のバーテンダーは昭和34年(1969年)に壽屋(現在のサントリー)主催の創作カクテルコンクールで「雪国」というカクテルを考案して入賞した人です。60年たって92歳になった現在も店に立っているとのことなので、この機会に訪れてみようと思ったのです。

店に入ると、92歳のバーテンダーはおられましたがカウンターの中で座って寝ているようでした。居るだけで作るのは他のバーテンダーかなと思いつつ、席に座りました。他のバーテンダーから注文を促され、当然、ぼくは雪国を注文しました。

すると突然、92歳のバーテンダーが立ちあがり、カクテルグラスに砂糖で縁取りし、シェイカーにウオッカ、コアントロー、氷を入れ、鮮やかな手つきで振ってグラスに注ぎ、ミントチェリーを沈めました。あっけにとられました。寝ていなかったのだ。

雪国は全国のバーで味わえますが、元祖雪国は60年の重みとプライドを感じる別格の味わいでした。92歳のバーテンダー握手させていただき、深々と一礼して店を後にしました。