北海道新聞 連載記事『朝の食卓』
三杯のかけそば

今日から師走。年の瀬ですので、北海道のかけそば3杯を選びました。
まず、人情を描いた物語「一杯のかけそば」。舞台は大みそか、札幌市内のそば屋です。母と息子2人が閉店間際に入ってきて、3人でかけそば1杯を注文して分け合って食べる。それが何年か続いたが、ある年から来なくなった、十数年後に3人でやってきて、夫の残した借金は全て返済し、息子2人は立派に成長して医師と銀行員になったことを報告し、かけそば3杯を注文して食べた、という内容です。
平成の初め、バブル景気の最中に人々の涙をさそった話です。大量消費が当たり前の時代だったから、倹約の話がはやったのかな。平成最後の12月に回顧するのも良いでしょう。
手打ちした麺をゆでる本格的なそばはもちろんですが、ゆでてある麺を湯煎して温かいつゆをかけるタイプも、気取らなくて良いと思います。
「一杯のかけそば」はフィクションですが、以下の2杯は実在します。1杯は、宗谷線の音威子府駅にある創業85年を数える「常盤軒」の立ち食いそばです。名物の黒いそばですが、なぜ、こんなに黒いのか不思議です。
もう1杯は、函館線岩見沢駅前にある焼き鳥屋のかけそばです。モツ串とかけそばを取り合わせるのが、昔からのスタイルで、旭川ー札幌間の旧産炭地でよく見られます。この店のかけそばは、キングオブかけそばです。