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北海道新聞 連載記事『朝の食卓』

席を譲られる

北海道新聞 連載記事『朝の食卓』


ぼくは52歳ですが、視力は落ちず、老眼にもなっていないので、今でも裸眼です。また、この30年間風邪をひいたこともなく、健康で、体力的に30歳くらいと思っています。ところが最近、路線バス乗車中に席を譲られるという体験をしました。

路線バスに乗り込んで、入り口近くに立っておりますと、背後から、「いいですよ」と声をかけられ、振り返ると高校生と思われる男子でした。彼の言っている意味が分からなかったので「何が?」と尋ねると、彼は「座っていいいですよ」と答えました。

ここで初めて、ぼくは、彼が席を譲ろうとしていることに気づきました。初体験で気が動転し、「マジか!席を譲られる年齢じゃない」と思ってしまい、「いいよ、そんなの。あなたが座っていたらいいよ」とむげに断ってしまいました。彼はけげんそうでした。

ぼくは老け顔で、若い時から実年齢よりもかなり上に見られており、高校時代の友人からは当時も今も「ジイ」と呼ばれます。漫画「ど根性ガエル」に登場する「教師生活25年の町田先生」は、まだ50歳に達していないと思われ、ぼくは町田先生よりも年を取ってしまったんだな、高校生からすると、席を譲る対象になってしまうのだな、と認識を改めました。

彼の厚意をむげに断ってしまったことを反省し、次に席を譲られることがあったら、不本意でも、もっと丁寧に断ろうと思いました。