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北海道経済 連載記事

2018年2月号

第95回 今年も始まった司法修習

どんな職業人も最初は新人。訓練を受けて能力を高めていく。裁判所や検察、弁護士会が協力して新しい法曹を育むしくみが司法修習だ。今回の法律放談は今年も1月から始まった司法修習について。(聞き手=本誌編集部)

今年も1月から旭川地裁管内でも司法修習(第71期)が始まりました。司法修習とは、司法試験に合格した人が実際に法曹として活動する前に、1年間にわたり積む研修で、そのうち約9ヵ月間は実務修習と位置づけられ、全国の地方裁判所所在地で実施されます。修習生は裁判所で16週間(民事裁判、刑事裁判で各8週間)、検察庁で8週間、弁護士会で8週間、自分で行き先を選択する研修8週間を消化した後、埼玉県和光市にある司法修習所に戻って最後の関門となる司法修習生考試(第二回試験と呼ばれている。ちなみに第一回試験は司法試験を指す。)を受け、これに合格すれば裁判官、検察官、弁護士になることができます。

旭川を含む全国各地の弁護士会には司法修習委員会が設けられており、司法修習への対応は弁護士会の重要な役割の一つと位置づけられています。弁護士会ごとの修習カリキュラムは地域により微妙に異なり、広大な管轄地域内に名寄、紋別、留萌、稚内の4支部を抱える旭川では、これらの支部所在地への研修旅行を実施し、遠隔地で勤務する弁護士の話を聞く機会を提供しています。

旭川地裁では以前、司法修習が行われていませんでした。旭川地裁には1994年に初めて4人の修習生が配属され、配属人数は司法試験合格者の変動の影響を受け、ピーク時には12人が配属されましたが、昨年は7人、今年は6人の配属でした。昨年は7人のうち3人の修習地が途中で変更になり、他の地方裁判所へと転属しました。修習地が途中で変わるのは極めて異例で、何か深刻な理由がありそうです。

修習地をどこにするかは、本人の希望に司法試験での成績も加味して最高裁判所が決定します。大企業の本社、高等裁判所所在地で、登録している弁護士数も多い大都市に希望が集中し、東京から遠く離れた旭川、釧路などは不人気地とされています。修習予定者に最高裁判所から配布される文書に、選択を薦める意味からか、不人気の小規模修習地名に下線が引かれてあったため、小規模修習地に配属された修習生間では「下線部の会」というサークル?もあったようです。修習生の中には旭川を全く希望しておらず、縁もゆかりもないのに、最高裁判所から一方的に旭川行きを命じられる人もいます。それでも修習終了後に旭川に残って弁護士として活動する人もいるので、これも一つの縁です。

私個人は希望通り、札幌地裁で修習を受けることができました。幅広い知識を得るためには、高等裁判所の所在地での修習が修習生としては理想です。

ロースクールを卒業したばかりの修習生と接していると、未熟で頼りないという感想を抱きますが、どの世界でも先輩は後輩に対して同じことを感じるのでしょう。私が修習生の頃にも、よく先輩弁護士から「今の修習生は質が低下している、自分たちの頃とは変わってしまった」といった説教を受けました。

ところが、修習中に、弁護士による判決文偽造が発覚、この弁護士は刑事処分を受けましたが、私はこの弁護士から説教されたことがあり、これを知った時には、修習生ながらにあ然としました。