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北海道経済 連載記事

2017年10月号

第91回 政治連盟の旭川支部設立

さまざまな業界の主張を政界に伝えるべく設立された政治団体が数多く存在する。最近、旭川で弁護士の政治団体の支部が設立された。支部長に就任した小林史人弁護士によれば、日本弁護士連合会(日弁連)の要望する政策を実現するのが目的だという。(聞き手=本誌編集部)

国会議員や閣僚の中には、稲田朋美前防衛大臣、自民党の高村正彦副総裁、民進党の代表選挙に出馬した枝野幸男衆議院議員など、弁護士出身者が数多くいます。旭川市及びその周辺地域選出の衆議院議員だった佐々木秀典氏も、日弁連理事などを経て政界入りしました。

一見すると国会と弁護士会の間には密接な関係がありそうですが、実は日弁連の国政に対する発言力はあまり大きくありません。裁判員制度が、日弁連の意見をあまり取り入れずに導入されてしまったことがそれを如実に示しています。医師、歯科医、最近話題の獣医など、多くの専門職の団体が政治団体を設立して国会に代表を送り込んで影響力を行使してきたのと対照的です。

日弁連にも政治団体の「日本弁護士政治連盟」(弁政連)があります。発言力強化を目的に、この数年、地裁本庁の存在する地域での地方支部設立の動きが加速し、旭川でも支部設立の準備を進めていました。今年8月19日、旭川市内で「弁政連旭川支部」の設立総会を開催して、旭川支部を設立しました。かねてから弁政連に参加していた人、旭川支部にのみ加入した人を合わせて25人の弁護士が参加し、すでに政治団体としての届出も済ませています。弁政連の支部は旭川支部が全国で44番目で、未設立の地域は5つとなりました。

政治団体の届出の際、「目的」を明らかにするのですが、弁政連旭川支部は「日弁連及び弁護士会の目的を達成するために必要な政治活動及び政治制度の研究を行う」ことを目的とし、同時に「特定の政党を支持することはしない」との立場も明確にしています。実際、設立パーティーには旭川地裁管轄区域(衆院道6区と12区の一部)に本拠を置く自民党2人、民進党1人の衆議院議員本人または秘書が出席しました。

今年の司法試験合格者から、司法修習生に対する給費制が復活することが決まりましたが、これは日弁連及び弁政連が国会議員への働きかけを行った結果です。弁護士の間でも賛否両論のある問題ですが、日弁連が主張している死刑反対、安保法制反対、特定秘密保護法反対などについては、弁政連も同様の姿勢で臨み、各支部を通じた議員への陳情活動を行い、国政に法改正を働きかけていくことになるでしょう。昨年、弁護士・学識研究者・労組関係者等の有志で構成する旭川ワーキングプア研究会では旭川市議会各会派への働きかけを行い、昨年末、官民間の契約の適正化をうたういわゆる公契約条例の制定にこぎつけましたが、弁政連旭川支部はこうした地方独自の活動にも取り組むことになるかもしれません。

弁護士業務は基本的に、国会議員の作った既存の法律に沿って進められます。しかし、安保法制も特定秘密保護法もそうですが、いったん法律が制定されてしまうと、そこから状況を変えるのは大変です。既に作られた法律だけでなく、これから作られる法律についても適正なものが作られるように行動する必要があるという認識が、弁政連の活動強化の背景にあります。