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北海道経済 連載記事

2017年5月号

第86回 証人喚問で見つけた同期生

弁護士など法曹の世界では、司法修習何期かが重視される。今回は小林史人弁護士がテレビ画面の中で見つけた司法修習「同期生」について。(聞き手=本誌編集部)

3月23日に行われた森友学園の籠池泰典氏に対する国会証人喚問。テレビ中継に釘付けになった人も多いのではないでしょうか。私が注目したのは籠池氏のすぐ後に控え、重要なポイントで籠池氏に助言を耳打ちしていた補佐人です。「どこかで見た顔だ。修習同期の山口貴士に似ているな」と思ってネットで検索してみると、やはり山口貴士氏本人でした。

山口弁護士も私も、1999年の司法試験(54期)に合格しました。司法試験合格者は埼玉県和光市にある司法研修所での集合修習、全国各地の地方裁判所での実務修習を経て弁護士などの法曹資格を取得するのですが、私と山口弁護士とは司法研修所での集合修習で同じクラスでした。それほど親しかったわけではありませんが、成績は優秀だったと記憶しています。人付き合いを好まないという意味ではやや変わり者でした。

山口弁護士は現在、カルト対策で有名な東京のリンク総合法律事務所に所属し、自身もカルト関係の裁判に積極的に取り組んでいます。山口氏からはリンク事務所の忘年会?への参加とカンパを促すチラシが送付されていたので、その活動は知っていました。最近ではアーティストの「ろくでなし子」氏がわいせつ物陳列罪容疑で逮捕された事件の裁判で同氏の代理人を務め、記者会見にも同席していました。

籠池氏がどのような経緯で、それまで密接な関係にあった大阪の弁護士ではなく、山口弁護士に補佐人を依頼したのかは知りませんが、国会での籠池氏の発言は予想以上にきちんとしていました。事前に予行演習を積んだとすれば、その効果があったのでしょう。

もう一人、同期の中に話題の人物がいます。現在、福井地裁で判事を務めている山口敦士氏です(山口貴士氏と名前が似ていますが偶然です)。山口判事とは札幌地裁での実務修習で一緒でした。若くして裁判官となった山口判事は順調に出世し、エリートコースである最高裁勤務を経て、2015年に福井地裁に赴任しました。

当時、福井地裁は関西電力高浜原発の再稼働差し止めを命じるかどうかで注目されていました。いったんは別の裁判官が差し止めを認める判断を下したのですが、その直後、最高裁によって送り込まれたのが山口判事を含む3人のエリート裁判官でした。マスコミの注目度は高く、山口判事が福井地裁に赴任したときは、マスコミから「どんな人物か」と修習同期の私のところにまで取材があったほどです。山口判事らによって同年末に再稼働差し止めの仮処分は取り消され、高浜原発は再稼働しました(その後、隣の滋賀県にある大津地裁からの仮処分を受け再停止したものの、3月28日、大阪高裁で大津地裁の仮処分は退けられました)

裁判官は、国の政策や自身の栄達などに左右されず、法律と良心に従って粛々と判断することになっていますが(憲法76条)、行政の意向に忖度して判断しているのではないかと感じられるときがあり、原発訴訟はその典型です。出世コースを歩んでいるエリート裁判官は行政の意向に沿った判断をすると思うのは私だけではないと思います。司法までが行政に忖度していては、行政の暴走を許すことになります。エリート裁判官には三権分立と司法の役割を再認識して、判断してもらいたいものです。