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北海道経済 連載記事

2016年5月号

第74回 約700人の弁護士が旭川に集結

5月27日に旭川市で開かれる日本弁護士連合会の定期総会で、小林史人弁護士は実行委員長を務める。今回の「法律放談」では、日本中から約700人の弁護士を集めて旭川市内で開かれる弁護士会最大の行事について語ってもらう。(聞き手=本誌編集部)

日弁連の第67回定期総会が5月27日に開かれます。旭川市での開催はこれが初めてです。

定期総会の開催は毎年1回で、年ごとの開催地は一定のパターンに沿って決定されます。まず、東京と東京以外の地域で交互に開催されます。東京以外での開催は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の各弁護士連合会の持ち回りです。今年は16年ぶりに北海道に順番が回ってきたのですが、旭川弁護士会が名乗りを上げ、札幌、函館、釧路の各弁護士会がいずれも誘致しなかったことから、すんなりと決まりました。計算上は16年×4会=64年に1回、旭川で開催されることになります。

旭川への誘致を行った当時、私は旭川弁護士会の会長でした。立候補した理由は2つあり、まず2016年は旭川弁護士会の創立百周年の節目に当たるということ、第2に、旭川の宣伝・PRになることです。道北は人の住む所ではない未開の地と考えている人が弁護士でも多く、旭川で全国から人の集まる大きな行事を開催すれば、そのような偏見を解消し、地域を盛り上げる効果が少しは期待できると思います。

一連の日程の中心は27日に旭川グランドホテルで開く定期総会です。例年、定期総会に提出される議案は予算案が中心ですが、今年は安全保障関連法制が4月1日に施行された関係で、安全保障関連法制の廃止を求める議案も総会に上程され審議される予定です。弁護士の大半は廃止に賛同すると思われますが、中には法制に賛成の弁護士もおりますので活発な意見交換がなされる可能性があります。

前日の26日には親睦のためのゴルフ大会、27日の夕方から夜にかけては功労者に対する感謝・表彰式、祝賀懇親会が行われます。このうち祝賀懇親会では、アトラクションとして旭川チカップニアイヌ民族文化保存会が古式舞踊を披露します。おそらく定期総会の参加者の大半にとって、アイヌの本格的な文化に触れるのはこれが初めてでしょう。

28、29日には日帰りコースと一泊コースの公式観光を用意しました。このうち一泊コースでは増毛の國稀酒造や、宗谷・猿払村を訪れます。猿払に観光目的で行くとすればほとんどの人はホタテが目的でしょうが、職業柄、弁護士が注目するのは鬼志別郵便局です。この小さな郵便局では1967年に「猿払事件」が起き、その後の裁判では公務員の政治活動と刑罰の是非が争われました。最高裁大法廷が示した判断は、現在に至るまで最も重要な憲法判例の一つとされており、司法試験の受験で必ず勉強するので、これを知らない弁護士はいないと断言できます。弁護士が鬼志別郵便局を訪れれば、少なからぬ感慨を覚えるはずです。

旭川弁護士会内に設置された実行委員会は約25人の弁護士で構成していますが、登録会員数70人余りという全国的に見れば極めて小規模な弁護士会ですので、すべての登録会員が何らかの形で総会運営に関わります。

日弁連の定期総会を通じて、このまちが小さいながらも魅力を備えていることを多くの人に知ってもらいたいと願っています。