しらかば法律事務所TOP 北海道経済 連載記事 > 第61回 弁護士会長退任にあたって

北海道経済 連載記事

2015年4月号

第61回 弁護士会長退任にあたって

筆者は、本年3月末で2年間に渡って務めてきた旭川弁護士会の会長を任期満了で退任する。今回の法律放談は、弁護士会長の職務について振り返る。(聞き手=本誌編集部)

現在、旭川弁護士会に所属する弁護士は70人。これは全国52の弁護士会のなかで2番目に少ない数です(最少は函館の50人)。会長は選挙で選ばれる建前ですが、会長候補者を事前の話し合いと調整で1人に絞りますから、旭川会では会長選挙が行われたことはなく「信任投票」で会長が決定します。ただ、最近は会員数100人程度の弁護士会でも複数の弁護士が立候補し、会長職をめぐって選挙戦を繰り広げています。旭川会でも近い将来、選挙が行われると思います。

一概には言えませんが東京や大阪といった大規模会に続く規模の会の会長はプレッシャーが大きそうです。そのような規模の会は自分達の考えを日弁連全体の方針に反映したいという思いが強く、日弁連の会議に幹部を傍聴に派遣し、自分達の会長がしっかりと発言しているか監視?している会もあります。

私が旭川会の会長に就任したあと、取り組んだ仕事の一つが会費の引き下げです。会費の徴収は弁護士会のさまざまな活動を支えるのに不可欠ですが、特に経済的な基盤の確立していない若手弁護士にとって重い負担となっていることから、会費を月5万円から4万円に引き下げました(登録2年以内は3万円)。当会が会費を引き下げたのはこれが初めてです。

また、日弁連定期総会を旭川に誘致し、来年5月の開催が決定しました。これからの準備作業は大変ですが、約600人の弁護士や関係者が全国から来旭すれば旭川市の観光業に少しは役立ちますし、当会の活性化にもつながると確信しています。

弁護士会長はこの地域を代表して日本弁護士連合会(日弁連)や北海道弁護士会連合会(道弁連)の活動にも参加します。日弁連には、会員数の少ない弁護士会27会で構成する「小規模弁護士会協議会」があり、旭川会も当然これに所属しておりますから、会長の私も会議に参加し、2年目には議長を務め、小規模弁護士会に対する助成金についての規程改正を実現しました。その準備のために何度も東京に出張し、日弁連の臨時総会前には想定問題集も作らなければならず、思いのほか大変な作業となりましたが、旭川会の会長にならなければできなかった経験です。

会長になってからは毎月の第3水曜日の夜に東京入りし、木曜日から金曜日にかけて開催される日弁連の理事会やその他の会議に出席していました。日弁連の総会、道弁連の理事会、各地区の弁護士連合会の行事、人権擁護大会などもあり、これらがつながったため1週間、旭川を離れたこともあります。

これだけ長時間拘束されると、本来の弁護士業務に影響します。債務整理や過払い金の仕事が多かった時代には、仕事をセーブしても何とかなったようですが、現在では、事件数が減少し、事件単価も以前より低下していますから、この状況で仕事をセーブすると立ち所に事務所経営に影響します。仕事をセーブしないとJRや飛行機で移動する時間や滞在先のホテルでの深夜や早朝の時間にも裁判書面の作成をしなければ間に合わない状況に追い込まれます。本誌の連載等もあり、あれもこれもと訳がわからなくなりそうでしたが、何とか乗り切ってきました。今後は、顧問料等である程度固定収入がある人でなければ、会長職は難しいかも知れません。

もっとも、1年任期ですと慣れたところで終わってしまいます。複数年務めた方が、いろいろな意味で会にとってはプラスになると私は思います。