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北海道経済 連載記事

2013年6月号

第39回 破産管財人は債権者のために

取引していた企業が突然破産を申し立て、売掛金や融資が回収できなくなった苦い経験をした方は多いはず。できることなら破産者と直談判したいが、それを許さないのが破産管財人。今回は、弁護士の破産管財業務の目的と位置づけについて。(聞き手=北海道経済編集部)

弁護士の仕事のジャンルの一つに、財産管理があります。具体的に言うなら、企業や個人が破産した場合の財産管理人(破産管財人)、相続人不存在の場合の相続財産管理人、成年後見制度の後見人などがこれにあたります。

このうち最も代表的なものが破産管財人であり、破産の申立後、裁判所によって、破産手続開始決定がなされると同時に選任されます。破産管財人には破産者の財産の管理処分権が帰属し、破産者に代わって会社の経営を引き継ぎ、破産者の財産の管理・処分を行います。そのため、破産者に原材料や商品を納入していた業者や金融機関は直接、破産者と連絡がとれなくなるのが普通です。

取引先が破産して売掛金や融資が焦げ付いた人から見れば、破産管財人となった弁護士は、破産者の味方に見えるかもしれません。しかし、私は、破産管財人は債権者のために存在していると理解しています。もっとも、破産管財人が「全ての債権者の平等」という大原則に従って行動し、抜け駆け的な債権回収を許さないため、破産者の味方に見えてしまうのだと思います。

債権者の中には「うちはあの企業が苦しくなった時期に何度も助けてやった。ほかの取引先よりも優先して貸した金を返してもらいたい」などと主張する人もいますが、法律上、優先権が認めれていない一般の債権者は平等に扱われます。心情的には一部の債権者の主張がもっともだと感じることもありますが、それを聞き入れることはできません。個々の債権者としては到底満足できないとしても、最後に平等に配当がなされる結果、全体としては債権者の利益が平等に図られていると理解してもらえればと思います。

さて、破産管財人に支払われる報酬は20万円から。破産管財人が破産者の債権の回収等に努力して、破産財団(破産者の財産の集合体)を増殖させた場合には、それに応じて報酬も増えます。破産者に20万円の資産がない場合、個人破産の場合は、管財人を選任しないで破産手続が終了します。企業破産の場合は、原則、破産管財人を選任するので、20万円を用意できなければ、そもそも破産手続を始めることができません。この場合、破産申立前に売掛金を回収するなどして、20万円を用意しているようです。

では、破産管財人はどのように選任されるのでしょうか。基本的には裁判所の自由裁量で、選任候補者として裁判所把握している弁護士の中から選任されます。

裁判所がどのような基準で破産管財人を選任しているのか、明らかにされていません。大まかにいえば、小さな案件では比較的若い弁護士が、大きな案件では豊富な経験を持つ弁護士が起用されているように見えます。

本稿で何度か解説している通り、弁護士が急増し、他方で弁護士業務の需要が減少傾向にあるため、法律事務所の経営の観点から見て破産管財の重要性は増しています。一定の頻度で破産管財人に選任されなければ、経営が厳しくなる法律事務所もあるでしょう。そのため、破産管財人の選任過程に物言う者も出てくると思います。以前は、代理人として破産を申し立てた弁護士が、破産管財人を推薦し、特段問題がない場合は、推薦された弁護士が破産管財人に選任されていましたが、現在、旭川地裁管内では、この方式は、採用されていません。選任過程の公正・公平を図るためと考えられます。