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北海道経済 連載記事

2012年3月号

第24回 弁護士会費の負担は適正か

弁護士会への所属は、弁護士として活動するための前提条件。今回の法律放談は、弁護士会の高額な「会費」について。(聞き手=北海道経済編集部)

弁護士法は、勤務する法律事務所の所在地域の弁護士会(単位弁護士会)に所属しなければ、弁護士としての業務ができないと定めています(強制加入団体)。このため北は稚内、南は占冠、西は増毛、東は紋別まで広がる旭川地裁管内の弁護士62人は、すべて旭川弁護士会に所属しています。道内には旭川の他、札幌、釧路、函館に弁護士会があり、これら4つの会で北海道弁護士連合会(道弁連)を構成しています。さらに、すべての弁護士は単位弁護士会を通じ、日本弁護士連合会(日弁連)に所属しています。つまり、旭川の弁護士は旭川弁護士会・道弁連・日弁連という3つの階層の組織に所属しているわけです。

旭川弁護士会の会費は月5万5000円。道弁連は2000円プラス特別会費。日弁連は1万4千円プラス特別会費。合計すれば最低でも月7万円強が必要となります。なお、日弁連の会費については、修習終了後2年間は月7000円に据え置かれます。

どのような職業にも「業界団体」があり、会員から徴収した会費をもとに運営していますが、弁護士の負担する会費は、国家資格が必要とされる、いわゆる「士業」の団体としては突出して高額です。どうしてこんなに高額な会費が必要なのでしょうか。弁護士会の会費はどのように使われているのでしょうか。 全国の弁護士から会費を集める日弁連の年間予算は約60億円に達しますが、そのおよそ3分の1は法律援助事業や弁護士の偏在解消といった公益活動に投じられています(と言えば聞こえは良いが、早い話が、援助事業や公益活動を行っている弁護士のギャラの支払に充てられている。)。残りは日弁連の委員会活動に全国から参加する弁護士の旅費、東京の霞が関にある弁護士会館で勤務している日弁連職員の人件費などです。旭川弁護士会の年間予算は約5500万円で、弁護士会館の維持費や弁護士会職員の人件費が主な使途です。

以前、旭川弁護士会では所属する弁護士の数が少なかったために会としての収入が少なく、また独自に弁護士会館を建設したために苦しいやりくりを強いられてきました。近時の弁護士急増の結果、会費収入は増えましたが、支出も多くなったため、現在でも綱渡りの資金繰りであることには変わりありません。一方、弁護士急増の結果、弁護士一人あたりの収入は減少する傾向にあり、特に、まだ収入が安定していない若手弁護士にとって、毎月数万円の会費を負担するのは困難を極めます。

弁護士が果たす社会的役割や、スキルアップの必要性、不祥事が起きた場合の自浄作用を考えれば、弁護士会が必要なのは明らかですが、今後、会として手がける事業が本当に必要なのかどうか、ムダがないかを検証する必要があるでしょう。たとえば、日弁連では約100の委員会が幅広い活動を行なっていますが、「仕分け」を行う必要もありそうです。また、これだけITが発達した社会なのに、日弁連の会議に出席するために、はるばる北海道や九州から東京まで移動しなければならないというのも奇妙な話です。

大都市圏の単位弁護士会では、会費の滞納を理由に弁護士が退会を命じられるケースも起きています。旭川でも高額な弁護士会費が廃業の理由にならないよう、状況にあった柔軟な会費設定が必要なのではないかと思います。(談)