北海道経済 連載記事
2026年6月号
第195回 社会の注目集める事件
社会の大きな関心を集める事件で犯人とされた人物にも、サポートする弁護士がいる。今回は、当番弁護士や被疑者国選弁護人の人選がどのように行われているのかに注目する。(聞き手=本誌編集部)
出張で東京に行き、訪問先で、私が普段は北海道の旭川に住んでいることを明かすと、相手に言われることがあります。「旭川って、いろんな事件が起きるところですね」。たしかにここ数年を振り返れば、神居古潭で発生した女子高生転落殺人事件、そして(刑事事件ではありませんが)生前いじめを受けていたとされる女子中学生が凍死体で発見された一件など、全国的な注目を集める事件や問題が少なくありません。
そして最近起きたのが、旭山動物園の職員が妻の遺体を動物用の焼却炉で燃やしたとされる事件です(職員は4月30日に死体損壊容疑で逮捕されました)。本稿を書いている時点で、ワイドショーの報道はこの事件一色です。事件の特異性、旭山動物園が全国的な知名度を持つ施設であることを考えれば、それも仕方がないのかもしれません。少し前までの京都府男児遺棄事件への関心がすべて旭川に移ってしまった感さえあります。市民の一人として、旭川がこのような関心を呼ぶのが残念です。
社会が注目する事件で、たとえ犯人が社会から強い非難を受けたとしても、弁護人依頼権が被疑者・被告人に憲法上認められた権利である以上(憲法37条3項)、弁護士の誰かが彼らをサポートすることになります。では、どの弁護士がサポートに乗り出すのか。容疑者は自らの意思と費用負担で私選弁護人を選ぶこともできますが、多くの容疑者は弁護士会や国の費用負担の下、派遣される弁護士にサポートされています。担当する弁護士は日によって変わり、当番弁護士制度や国選弁護制度を利用する人に弁護士を選ぶ権利はありません。
逮捕された人は警察で取り調べを受けて48時間以内に検察に身柄を送られます。それから24時間以内に検察から裁判所に勾留請求が行われて、裁判所が勾留を決定すれば10日間(さらに10日間の延長申請も可能)の勾留期間中に警察や検察による捜査が行われます。最大で23日後に、起訴か不起訴かが決まります。逮捕されてから勾留されるまでの間、1回だけ無料で接見してサポートするのが「当番弁護士」、勾留されている間が「被疑者国選弁護人」、起訴されてから裁判が終わるまでサポートするのが「被告人国選弁護人」です(被疑者国選弁護人と被告人国選弁護人は同一の弁護士が務めるのが一般的です)。
当番弁護士と被疑者国選弁護人については、担当弁護士の名簿が作成されており、名簿に従って担当日が決まります。実は、私は5月の連休中に当番弁護士と被疑者国選の担当日が割り当てられており、勾留決定の日時、他の事件の割り当てによっては、私が動物用焼却炉の事件で被疑者国選を担当する可能性がありました。ある程度、覚悟をしていましたが割り当てられませんでした。
社会の大々的な注目を集める事件の容疑者に関わった場合、マスコミの取材を受けたり、一般市民の方からも電話がかかってくるなど、私のような個人事務所では仕事にならない状況に陥ることも予想されます。しかし、被疑者国選担当弁護士の名簿に登載されている以上、こうした状況から逃げることはできず、弁護士として被疑者の利益になることを精一杯するしかありません。

