北海道経済 連載記事
2026年3月号
第192回 法科大学院と法曹への近道
経営難や募集停止が相次いで伝えられていた法科大学院だが、従来よりも最大で約2年、法曹になる時期を早めるルートが用意され、人気回復の期待が高まっている。今回はこの「近道」と不安要素に注目する。(聞き手=本誌編集部)
法曹(弁護士や検察官、裁判官)になるには2つのルートがあります。多くの人が選ぶのは法科大学院で、修了後に司法試験を受け、合格することで法曹になれます。これとは別に、法科大学院に通う金銭的、時間的な余裕がない人のために、予備試験に合格してからの司法試験受験というコースも用意されています。2004年の創設以来、20年以上が経過した法科大学院ですが、成功したとは言えません。地方の大学、都心部の私立大学が設立した法科大学院では合格率、入学者が低迷し、これまでに40校が廃止されました。現在残っているのは34校となっています。
法科大学院の経営難の最大の原因は弁護士の就職難でしょうが、予備試験との競合も一因です。予備試験に合格するのは非常に難しく、2025年の受験者は1万2432人、合格者は457人で合格者率3・6%となっています(予備試験合格者の9割以上が司法試験にも合格します)。予備試験合格者の学校別内訳をみると、例年東京大、慶応大、早稲田大、京都大、中央大など法科大学院を持つ学校が上位を占めています。合格者の半分以上は20〜24歳で、大学の学部または法科大学院の学生の年齢層と重複しています。このルートには年齢制限がなく、高校生が合格することもあります。予備試験は金銭的、経済的余裕がない人の救済策というより、法曹になるための近道として学生に利用されているのが現状です。
こうした状況に対応して、大学や法科大学院が用意したのが「法曹コース」です。大学法学部と法科大学院が連携し、最短で大学法学部で3年間プラス法科大学院で2年間学び、法科大学院2年の途中で司法試験を受けることができます。合格すれば6年間(1年間の司法修習含む)で法曹になれます。従来なら大学4年間、法科大学院2年間、修了後の司法試験、司法修習を合わせ約8年間が必要でしたから、約2年の短縮です。
法科大学院で学んで2025年の司法試験に合格した人は1153人、このうち712人は在学中でした。合格率も修了者が21・91%だったのに対して、在学中の人は52・66%に達しています。優秀な受験生が近道を経由していることがわかります。予備試験を経由した受験者を含めれば、今や、司法試験は1回で合格するのが普通となっています。
予備試験を独学で合格する受験者はほとんどいないでしょう。その多くが司法試験予備校を利用しています。このため法曹になるまでの時間の短縮には、予備校への対抗策という側面があります。予備校は短期間で予備試験に合格する技術を伝授してくれますが、法科大学院はもともと時間をかけた教育を通じて「理論と実務の架橋」となる人材を育むことを目的としていました。近道のために大学や法科大学院で効率を追求した教育が行われれば、予備校に近づいてしまい、法科大学院の意義そのものが問われかねません。

