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北海道経済 連載記事

2026年2月号

第191回 手形法と司法試験

まもなく廃止される見通しの手形法は、司法試 験の論文式で毎年出題されていた時期があった。 今回は小林史人弁護士が、大学時代に指導を受け、司法試験受験時には大いに役立った手形法について振り返る。(聞き手=本誌編集部)

私が司法試験を受験していたのは、37〜27年前です。論文式試験は7回受けました。当時、答案は縦書きでした。1999年に最終合格しましたが、翌年から、民事訴訟法と刑事訴訟法いずれか選択だったのが、両訴必修となり、法律選択(民訴法・刑訴法・行政法・破産法・労働法・国際公法・国際私法・刑事政策のうち1科目を選ぶ)が廃止されました。もともと憲法・民法・刑法・商法が必修で、商法は会社法と手形法から1問ずつ出題されるのが通例でしたが、手形法は1999年に出題されたのを最後に論文式での出題がありません。また、2000年から答案も横書きとなりました。旧司法試験も1999年と2000年とでは、科目も方式もかなり変わりました。当時の中大は、商法、訴訟法、法律選択のうち刑事政策に有力な学者がおり、中大出身の受験生は、基本三法以外(商法、訴訟法、法律選択)を得意とする傾向があったと私は思っています。この変更は、訴訟法をどちらか選択し、法律選択や商法で稼いでいた中大のベテラン受験生にとって大打撃でした。

私は、大学3年と4年の時、商法の専門ゼミに所属し、当時は、学説上議論が白熱していた、手形法を中心に指導を受けました。司法試験では民事訴訟法を選択し、法律選択では国際公法を選択していました。手形法は、司法試験に出題されないどころか、手形法自体が廃止される見通しであり、国際公法も実務では全くと言っていいほど出てきません。司法試験の受験勉強で注力した分野が、実務では、あまり役立っておらず、あの受験勉強は、いったい何だったのかと隔世の感があります。

前記のとおり、私は大学時代、手形法を中心に指導を受けていました。学問の世界では、どこでもそうだと思いますが、法律学の場合は、東大系の学派が幅を利かせており、東大学派が実務通説でなくとも、東大系の学者の説を採れば、司法試験に合格でき、受験通説となっていました。そんな中、手形法では中大の学者が実務通説(交付契約説・手形作成して交付時に手形債務発生)で論陣を張り、東大の学派(創造説・手形作成時に手形債務発生)と真っ向から対峙していました。私も、当然、中大学派、実務通説を採っており、手形法は得意で、司法試験での成績も良かったです。結果的に、合格年は手形法からの出題が最後となった年であり、国際公法も最後の年でしたから、この年に最後合格できなかったら、おそらく変化についていけず、合格できなかったのではないかと思っています。司法試験をあきらめて就職したかもしれません。実際、私の仲間の中には、そうした道を選んだ人もいます。その意味で中大で商法の専門ゼミに入れていただき、指導を受けられたことに感謝しています。そして、当時、指導していただいた恩師が、この3月に米寿を迎えます。

手形法も、2027年3月末に紙の手形や小切手が全面的に廃止されるため、歴史的な役割を終えることになります。近く開かれる恩師の米寿記念のお祝いの会では、当時お世話になった方々と手形法の話でもしたいなと思っています。