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北海道経済 連載記事

2011年8月号

第17回 気になる弁護士費用について

「法的なトラブルについて弁護士に相談したいが、多額の費用がかかるのではないか」──そんな心配をしている人も少なくないはず。今回の「法律放談」は、気になる弁護士費用について。(聞き手=北海道経済編集部)

旭川弁護士会を含めて、2004年までは各地の弁護士会が報酬基準、いわば標準価格を定めていましたが、法改正により弁護士費用は自由化されました。したがって、現在「標準価格」のようなものは存在せず、弁護士が個別に金額を定めています。それでも、大まかな「相場」は存在しています。

弁護士費用は▽相談費用▽着手金▽報酬金の三つに大別することができます。まず、法的な手続きを弁護士に正式依頼する前の相談費用ですが、旭川市の場合、相場は30分で5000円といったところでしょう。東京など大都市の場合には30分で8000円など、より高い金額を設定している人もいますし、テレビに出演している著名な弁護士の場合、時間上限を設けずに1回2万円としている例もあるようです。もっとも、近時の弁護士増加による競争激化により、相談を無料で行う弁護士も登場しています。また、弁護士会が行っている法律相談のうち債務整理の相談は無料ないし無料化する方向です。

着手金は、訴額(請求金額)3000万円以内の場合、その5%プラス9万円。勝訴した場合にかかる報酬金は、訴額の10%プラス18万円が従前の標準報酬で、現在もこれを採用している弁護士も多いです。この費用をそのまま適用すれば、たとえば1000万円の損害賠償を求める裁判を起こし、その主張が裁判で全面的に認められた場合、着手金は59万円、報酬金は118万円、合計177万円となります(別途消費税がかかります)。

所得が一定の金額に充たないなど、所定の条件を満たす場合には、法テラスが弁護士を紹介したり、弁護士費用を立て替えてくれたりします。この場合には、一般的な「相場」よりも安い法テラスの定めた報酬基準が適用されます。法テラスのしくみが整備されて以降、その報酬基準は弁護士費用全般を引き下げる作用を果たしています。

さて、現在の厳しい地域経済の状況を考えれば、弁護士費用は依然として高すぎるという見方があるのも事実でしょう。しかし、私たち弁護士が事務所を維持しながら継続的に法律サービスを展開するために、一定の収入が必要であることは言うまでもありません。

まず、多岐にわたる弁護士の仕事をこなすためには、最低1人の事務職員が不可欠です。事務所の家賃や、パソコンやコピー機、電話機といった機器の購入・リースにもお金がかかります。資料の購入代、道内各地・首都圏などへの出張費用、弁護士会の会費など、さまざまな経費を合わせれば、節約しても年間約1000万円に達します。これに、弁護士本人や家族の生活を維持するためのお金を加えれば、毎日約6万円の「売り上げ」がなければ、弁護士として活動するのは難しいでしょう。弁護士がこなす事件数にも限度があることを考えれば、前記の法テラス基準の報酬だけでは厳しいと言わざるを得ません。

このような話をすると「裁判を起こしたとしても、裁判所に払うお金はとても安い。弁護士だけが取り過ぎではないか」と反論する人がいます。裁判所の運営のために年3200億円もの税金が投じられているという事実は、あまり知られていないようです。(談)