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北海道経済 連載記事

2011年7月号

第16回 ただいま司法研修中

司法試験に合格した「法曹の卵」が、必要な知識や技術を身に付けるのが司法修習。現在、旭川地裁管内の法律事務所で12人が修習を受けている。今回の法律放談は、この司法修習について。(聞き手=北海道経済編集部)

私の事務所にも、5月30日から司法修習生1人が配属されました。司法修習は法曹(裁判官、検察官、弁護士)にとり重要なステップで、私が司法修習を受けたのは10年以上前のことですが、当時の記憶は今も鮮明です。

新司法試験合格者の場合、約1年にわたる修習期間中に、刑事裁判、民事裁判、弁護、検察についての分野別実務修習(各8週間)、さらに修習生がそれぞれ希望する分野についての選択型実務修習、司法研修所での集合修習があり、研修所の卒業試験(司法試験が第一回試験という位置づけから、この卒業試験は第二回試験と呼ばれています。)に合格すれば法曹になることができます。

年間2000人余りの司法修習生は、全国に50ある地方裁判所に振り分けられ、その地域の裁判所、検察庁、弁護士会・弁護士事務所で研修を受けます。旭川と釧路で司法修習が始まったのは今から16年前の48期で、それまで道内の修習地は札幌と函館だけでした。旭川への配属者数は全国最少の4人から、6年前の59期の時に7人に増えて、新司法試験が導入された4年前から12人となっています。当初の3倍とはいえ、全国で最小規模であることには変わりはありません(東京には司法修習生が数百人配属される)。

冬の寒さと首都圏からの距離が影響してか、旭川は全国有数の不人気な実務修習地となっています。かつて、その不人気ぶりは修習を終えたあとの就職先にも反映されており、旭川で実務修習が開始されても、旭川で弁護士登録する人は1年に1人いるかいないかで、毎年旭川に配属される4人の司法修習生も、旭川には残らないことが普通でした。もっとも、司法修習生の増加・就職難にともない、5年くらい前から毎年複数の人が、修習終了後に旭川で弁護士登録するようになっています。

弁護修習では修習生はそれぞれ個別の弁護士事務所に配属されます。裁判書面の作成、民事においては法律相談や依頼者に対する対応、刑事においては被疑者・被告人との接見の方法が修習内容となります。弁護士は、基本的に依頼者や被疑者・被告人の言い分に沿って行動しなければならないので、ときには明らかに不合理な主張をしなければならないときもあります。これが裁判所や検察にはない弁護士の特徴で、司法試験受験時代に裁判例の勉強をしてきた修習生としては違和感を覚える場面でしょう。しかし、法曹三者それぞれの役割の違いを理解することも司法修習の面白いところです。

なお、修習生が配属されたからといって弁護士が報酬を得るわけではありませんが、すべての法曹は過去に先輩法曹の下で修習を受けているのですし、修習生の配属を受けることは、弁護士として信頼があることを意味し、ある意味名誉なことですので、私は積極的に修習生の配属を受けています。

以前、弁護士にはいわゆる「人権派」の色彩が濃厚な人がいたように思います。人権派の方が修習生の面倒をよく見る反面、知識や技術だけでなく、思想信条も伝えようとする傾向が強かったように思いますが、近年このような傾向は薄れているようです。

さて、最近の修習生は、私のころよりもよく勉強していますが、就職状況はかなり厳しく、現時点で約半分の人が進路が未定のようですし、卒業試験の不合格率も以前より上昇しています。司法改革に伴う法曹人口の急増と、法曹に対するニーズの間に生じたミスマッチのしわ寄せが、若い修習生達に及んでいるように思えます。(談)