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北海道経済 連載記事

2011年4月号

第13回 消費者保護の必須知識

「無理矢理、高額な家のリフォーム契約を結ばされた」「必要でない布団を大量に売りつけられた」──このような悪徳商法の被害者の味方が弁護士だ。今回の「辛口法律放談」は、消費者を支えるために弁護士が備えていなければならない基礎知識について。(聞き手=北海道経済編集部)

消費者を狙った悪徳商法が後を絶ちません。十分な判断力や法律の知識のない人を狙った悪徳商法が相次いで発生したことを受け、特定商取引法、消費者契約法、割賦販売法などの法律が制定されました。弁護士は消費者の依頼を受けて、これらの法律や政府の定めたガイドラインを利用しつつ業者と交渉したり、必要な場合には業者を訴えたりします。

しかし弁護士のなかには、これらの法律の内容をよく知らない人もいます。ベースとなる民法はともかく、消費者保護の関連法は、今も昔も司法試験の必修科目とされているわけではありません。また悪徳業者とのいたちごっこのため、これらの法律は公布された直後に再改正に向けた準備が始まることが少なくなく、また「抜け穴」をふさぐために条文が詳細かつ難解になる傾向があります。弁護士が積極的に弁護士会で提供する研修会や専門書を通じた情報収集に努めない限り、消費者保護に必要な十分な法律知識を蓄えるのは難しいと思われます。

法律の条文は、弁護士が知っているか知らないかにかかわらず、すべての裁判で一律に適用されると考えている人がいるかもしれませんが、それは違います。消費者に有利な条文が法律のなかに明記されていたとしても、弁護士がそれを明確に主張しなければ実務上は意味をもちません。裁判官は中立の存在であり、「弁護士さん、あなたの依頼人に有利な条文が○○法の第××条にありますよ」と教えてくれるほど親切ではないのです。

たとえば、クーリングオフという概念は一般の人にも広く知られていますが、▽クーリングオフが可能な期間が契約時からではなく、説明書面をもらってから8日間であること(商品や契約形態により、日数が異なることもあります)、▽学習塾などサービスが継続的に提供される契約の場合には消費者側が若干の補償を行うことを条件に未履行の部分については契約を解除できること、などはあまり知られていないようです。弁護士にこれらの知識があってはじめて依頼人の権益を守ることのできるケースもあるでしょう。

数々の消費者保護関連法のなかで、あまり活用されていない法律が消費者契約法です。この法律によれば、業者がウソをついた、断定的な言葉を使った、消費者に都合の悪いことは説明しない、買うまで業者が帰らない、消費者を帰さないなどの場合、消費者は契約を取り消すことができますが、この取消権に時効(追認可能時から6か月)が設けられていることが影響してか、そもそも、弁護士がこの法律をよく知らないためか、消費者保護の「武器」として弁護士に活用されることは少ないようです。

かつて弁護士の多くはオールラウンドプレーヤーでしたが、近年では特定分野についての専門知識が求められる場面も増えています。消費者保護に関する法的なサポートを依頼する前に、弁護士がその分野でどのような実績をもっているか、尋ねてみる必要があるかもしれません。(談)