しらかば法律事務所TOP 北海道経済 連載記事 > 第115回 外国籍の日弁連副会長

北海道経済 連載記事

2019年10月号

第115回 外国籍の日弁連副会長

日本国籍を持たなくても弁護士になることは可能。今回の法律放談は、韓国籍をもつ日本弁護士連合会の副会長に注目する。(聞き手=本誌編集部)

少し前の話になりますが、日本弁護士連合会で今年4月1日、新会長と15人の新副会長が就任しました。このうち韓国籍を有している白承豪(はくしょうごう)副会長がとりわけ注目を集めました。外国籍の人が日弁連副会長に選ばれるのはこれが初めてです。

日本では、日本国籍を持っていない人でも、司法試験を受けて、弁護士になることができます(検察官、裁判官は公務員であるためなれません)。以前は、容疑者を取り調べたり裁判で合議に立ち会ったりすることのある司法修習を受ける条件として、日本国籍取得を求めていたのですが、司法試験に合格した在日韓国人がこの条件の撤廃を求めて粘り強い活動を展開した結果、「憲法と法律を遵守する」という誓約書を提出すれば、外国籍でも司法修習を受けて弁護士になることが可能にになりました。

白氏はソウルに生まれ、11歳で父親の仕事の関係で沖縄に移住。琉球大学を卒業して5年後に司法試験に合格、大阪での弁護士勤務を経て、独立して神戸市内で法律事務所を開き、兵庫弁護士会の会長も務めました。

韓国・北朝鮮籍の弁護士は他にも多くいて、在日コリアン弁護士協会(LAZAK)という団体もあり、在日コリアンなどマイノリティーの権利を守るための活動を展開しています。白氏はLAZAKの元会長でもあります。

この団体も関わるかたちで、日弁連と、韓国側の同様の団体である大韓弁護士協会の間で交流が行われています。2013年当時、旭川弁護士会の会長だった私は、充て職である日弁連の理事も兼任していた関係で、訪韓してこの会議に出席したことがあります。双方の法曹養成制度について意見を交換する機会があったのですが、日本では司法修習の段階で弁護士、裁判官、検察官に分かれるのに対して、韓国ではすべての法曹がまず弁護士を経験することになっており、分野を問わず、裁判外の紛争処理も経験できるので総合的な判断をする力を養成するにはこうした方式も良いのではないかと感じました。

さて、白氏が注目を集めた点がもう一つあります。5歳のころに交通事故で右腕を失った身体障がい者であるということです。弁護士は法律の知識や経験、判断力があれば身体的な障がいはあまり影響しませんし、車いすで活躍している弁護士、視覚障がいや聴覚障がいの弁護士もいます。私の受験時代からの知り合いのある弁護士は、不慮の事故で左手首から先を失いながら、少年時代からずっと本格的に野球をやっており、現在もマスターズ甲子園を目指して野球をやっています。彼は在日コリアンで日本国籍を取得していますが、白氏を引き合いに出して「自分の方が上(苦労人)だ」なんて言っています。

白氏は人権擁護委員会や国際人権問題委員会担当の副会長として、自らの立場を生かし、外国人や障がい者の人権を守る活動に力を入れていくと語っています。今後、国内で働く外国人労働者が増加すれば、外国籍弁護士が活躍する場は広がっていくのかもしれません。

白氏は日本語で司法試験を受けて法曹になりましたが、これとは別に、国際的な法律活動に従事する「外国法事務弁護士」という制度が1992年に整備され、現在425人が登録しています。