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北海道経済 連載記事

2011年2月号

第11回 弁護士選びのポイント

一口に「弁護士」と言ってもさまざまなタイプの人がいる。法的な紛争や刑事・民事裁判でエキスパートの助けが必要になったとき、何を基準に弁護士を選べばいいのか。今回の法律放談は、弁護士の種類と選択のポイントについて。(聞き手=北海道経済編集部)

一口に弁護士といってもさまざまです。まず依頼者のタイプに注目すれば、個人からの依頼を仕事の中心にしている弁護士と、企業からの依頼を仕事の中心にしている弁護士に大別することができるでしょう。一般的に前者は「街弁」、後者は企業法務弁護士と呼ばれます。このほか大都市なら、国際的な法律業務を専門に手がける「渉外弁護士」も活動しています。

大ざっぱな言い方をすれば、街弁は弱者の味方、企業法務弁護士は企業、団体、地方自治体などの主張を代弁するかたちで法廷に立つことが多いと言えます。街弁には、いわゆる「人権派」の意識を強く持っている人もいます。とはいえ、その立場は固定的なものではなく、若いころは街弁でも、一定の年齢に達するにつれ次第に企業法務関連の仕事が多く手掛けるようになる人もいます。

弁護士になるまでの経路で分類する方法もあります。多くの弁護士は司法修習を終えてからすぐ弁護士になります。その一方で、検察官をやめて弁護士になった人(ヤメ検)、少数ですが裁判官をやめて弁護士になった人(ヤメ判)もいます。

さて、民事訴訟で誰かを訴えようとしたり、誰かに訴えられたとき、どんな弁護士を選んだらよいのでしょうか?

誰を弁護士につけようが、勝ち負けが変わらない事件もあります。個人の破産や民事再生の申立ては、手間はかかりますが、大半の場合、誰がやっても結果は同じです。過払い金返還請求訴訟も以前は大変でしたが、今は誰がやっても同じです。債務整理については、どの弁護士に依頼しても結果は同じなので、弁護士をつけるならば、費用の安い弁護士を選ぶべきでしょう。

債務整理以外の民事訴訟については、勝ちスジ、負けスジがあり、勝ちスジの事件については、弁護士をつけなくても勝訴できる場合も珍しくない反面、負けスジの事件については、弁護士をつけても勝訴することは困難です。負けスジの事件に高い費用を支払うことは避けたいので、弁護士には、勝訴可能性を十分確認するべきでしょう。

ただし、負けスジの事件でも弁護士の腕によって「負け方」が変わってくることもあります。たとえば、AさんがBさんを訴えたとしましょう。客観的に見てAさんの主張に明らかに合理性がある場合、どんなに優秀な弁護士がついたとしても、Bさんの勝訴は望めません。しかし、弁護士の能力次第で、Bさんの主張も少し認めさせることができる可能性もありますし、長期間の裁判を避けて早期の和解に持ち込み、Bさんのダメージを和らげることができるかもしれません。裁判の勝ち負けはもちろん重要なポイントですが、負け方もまた大切だと、私は思います。

なお、刑事事件の場合には、起訴前の弁護、起訴後の保釈については、検察に顔の利く弁護士の方が、良い結果が出ているように思います(自白事件に限る)。制度上、検察当局の態度が弁護人の出自次第で変わることはないはずですので、その弁護士が優秀ということなのでしょうが、現実的には人脈などの要素が影響しているのかもしれません。

弁護士を探すとき、最初に相談した人に実際に弁護を依頼しなければならないという決まりはありません。車を買うとき、複数の車種を比較検討するのと同様、複数の弁護士に相談し(この時点で相談料はかかりますが)、弁護士費用についても明確な説明を受けたうえで、この人に任せたいと感じた人と委任契約を交わしてはどうでしょうか。(談)