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北海道経済 連載記事

2018年11月号

第104回 法律事務所のネーミング

弁護士の事務所の名前は最後に「法律事務所」の5文字さえ付いていればあとは自由に決められるが、実際にはいくつかのパターンに分類される。今回の法律放談は事務所のネーミングをめぐるあれこれについて。(聞き手=本誌編集部)

弁護士が独立し、自分の法律事務所を開設することになったら、まず最初に悩むのは法律事務所のネーミングです。

法律事務所の名称は、いくつかのタイプに分類することができます。最も多いのが弁護士の姓またはフルネームに「法律事務所」を加えたもの。「田中法律事務所」「田中一郎法律事務所」といった具合です。複数の弁護士が共同で経営する場合には「田中・鈴木法律事務所」などと姓を並べることになります。私がこの方法で事務所のネーミングをすれば「小林法律事務所」となりますが、「小林」姓の人は多く、あまりにありふれていて、面白くないし、他の事務所と誤認混同されるかもと考え、この方法は使いませんでした。なお、事務所のネーミングを検討する際には、日弁連の弁護士検索サイトを使って同一名称、類似名称がないかあらかじめチェックできます。

もう一つの一般的なネーミング方法が地名です。この地域なら「旭川」「あさひかわ」「道北」などがこれに該当します。地名だけでは誤認混同のおそれがあるためか、「総合」「共同」「第一」「国際」などの言葉を挟む例も多いようです。

3つ目が優しいイメージのある植物名で、最も多いのが「さくら」です。地名プラス「さくら」、「さくら総合」「さくら通り」「さくら第一」などの事務所があります。

私の「しらかば」法律事務所も植物系です。「しらかば」は北国を代表する樹木のひとつであり、北海道の情景の象徴でもあることから、この名称を選びました。ただ、私は北海道に戻ってきてから、「しらかば」の花粉にアレルギー反応が出るようになってしまい、実は体質的には苦手です。

植物名に対して、動物名はごく少数ですが、ネット検索してみると「赤ネコ法律事務所」が東京都内にあることがわかりました。弁護士と漫画家の活動に並行して取り組んでいるユニークな人の事務所のようです。他に、大阪には「ライオン橋法律事務所」が存在していますが、これは近所の橋の欄干にライオンの石像が置かれていることが由来のようです。

これらの分類にあてはまらないものとして、希望や可能性を感じさせる抽象的な言葉を冠した事務所名称があります。全国各地にある「○○みらい法律事務所」はその典型例でしょう。

もうひとつ、カタカナ名称のところも少なくないのですが、その多くが「ア」で始まる名称を選んでいます。これは、電話帳でカタカナの「ア」がひらがなの「あ」よりも先に来るためでしょう。

さて、「しらかば法律事務所」に名称が近いものとして、「千歳しらかば法律事務所」「愛知しらかば法律事務所」「信州しらかば法律事務所」が存在するのですが、以前、他の「しらかば」向けの郵便物が、私のところに届いたことがあります。おそらくは「しらかば」だけを手がかりにネットで検索した人が、よく確認しないで差し出したのでしょう。類似例が少ない名前でも誤認混同されるのですから、メジャーな名前だと混乱を招くことがもっと多いかもしれません。