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北海道経済 連載記事

2018年8月号

第101回 裁判期日の変更と電話による「出廷」

電話やネットで仕事を済ませることが増えたこの時代にも、弁護士は多くの場合、決められた期日に裁判所に出頭することを求められている。今回の法律放談は、やむを得ない場合の期日の変更や、電話による期日への参加について。(聞き手=本誌編集部)

民事裁判の開廷日時(期日)は、初回については裁判所が決定して、原告・被告の双方に連絡します。2回目以降は裁判所、原告、被告の都合をすり合わせて期日を決めます。初回期日については、欠席しても相手方当事者が出頭していれば訴状や答弁書に記載した事項を陳述したものとみなす「陳述擬制」という制度がありますが(民訴法158条)、2回目以降は、原則として欠席は許されません。

決定された期日の変更は、「顕著な事由」がある場合に限り許されます(民訴法93条3項)。「顕著な事由」の具体例としては、まず、悪天候や自然災害のため裁判所まで行くのが著しく困難なケースです。最近、私は札幌高裁で期日が予定されていたのですが、当日の大雨でJRが運休し札幌に移動することができず、札幌高裁がその期日を取り消し、期日は延期されました。

また、弁護士が自らの体調不良を訴えて期日の変更を求めることがあります。大審院時代の判例に発熱38度5分の急性感冒は「顕著な事由」に該当するとしたものがあります。ある弁護士が二日酔いで裁判所に行くことができず「体調不良」を口実に期日の変更を求めたという話を聞いたことがありますが、二日酔いは「顕著な事由」に該当しないことは当然ですから、これはいかがなものかと思います。

遠隔地の裁判所で期日がある場合、弁護士は自ら運転して車で移動することを余儀なくされることがありますが、面積が広く、冬の天候が厳しい北海道では、道路状況等により期日指定された時間までに裁判所まで到着できないことがあります。私は最近、道を間違ってタイムロスしたため、期日に間に合わせようと速度を上げて急いだところ、速度超過20㎞毎時で止められ青キップを切られてしまい、余計に遅れてしまいました。

遠隔地の裁判所での期日に電話で参加する「電話会議」という制度もあります。当事者の主張整理をして口頭弁論期日(専ら証人尋問期日)の準備をする手続を弁論準備手続といい、その期日については、原告、被告のうちいずれか一方が電話で期日に参加することが認められています(民訴法170条3項・双方が電話で参加することは認められていない)。

電話会議を利用した側が裁判で不利になることは建前上ないのですが、私は、可能な限り出頭することにしています。電話会議終了後に裁判官が非公式に発言をすることがあり、その発言から、その時点での裁判官の心証(判決の内容)を推測することができる場合があるからです。

電話だけでなく、テレビ電話やインターネットが発達したこの時代、もっとITを活用したほうが司法の効率が高まるという考えもあるかもしれません。車で長距離移動するのは大変ですが、他方で、地方の弁護士の生活は、管轄制度と、第1回期日以外は出頭しなければならないというルールが守っているとも言えます。もしも管轄制度が廃止されれば、事件は東京・大阪に集中するだろうし、当事者双方がテレビ電話で期日参加可能となれば、東京・大阪の大手法律事務所が全国の民事裁判を独占してしまうことになるでしょう。