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北海道経済 連載記事

2010年11月号

第8回 武富士破たんの影響

9月28日、かつて消費者金融業界最大手だった武富士が会社更生法の適用を東京地裁に申請した。今回の「辛口法律放談」は、武富士からの過払い金返還への影響や、過払い金問題全体の今後の行方について解説する。(聞き手=北海道経済編集部)

武富士が会社更生法の適用を申請しました。利息制限法所定の上限利率を超過した利息部分(いわゆる過払い金)の返還が重荷になって、経営を圧迫したことが原因です。過払い金の返還はどのような影響を受けることになるのでしょうか。

武富士に関しては、今後、一定の債権届出期間が提示され、この期間内に過払い金の届出をしないと過払い金返還請求権は失権します(権利を失い、請求できなくなります。)。届出をしてもかなりの割合でカットされることが予想されます。ロプロ(旧日栄)が昨年会社更生法の適用を申請したときは97%が、クレディアが2007年に民事再生法の適用を申請したときは60%がカットされました。武富士の場合は、裁判中の案件が11万件、和解ないし判決で裁判は終了したが支払いが未了の案件も多数あることに加え、未請求者は200万人ともいわれているので、負債総額が莫大になる可能性があり、そうなると大幅な過払い金のカットが予想されます。100万円の過払い金の返還を受けるはずが、十数万円しか返還を受けることができない事態となり、返還を受ける時期も10ヵ月程度先になってしまうでしょう。武富士に関する債権の届出期間には、失権を避けるため、過払い金の届出が殺到することが予想されます。そして、大幅にカットされた過払い金の返還を受けることで、武富士に関する過払い金は終息することになります。

さらに、武富士以外の比較的体力のある消費者金融会社(数社しかありませんが)に対しても、今回の武富士の件を契機に過払い金請求が殺到する可能性が高いと思います。武富士に関する過払い金の債権届出を検討する際に、武富士以外の消費者金融会社からの借り入れに関しても過払い状態となっていないかを検討するからです。過払い金請求が殺到した結果、武富士以外の消費者金融会社も、過払い金返還が重荷になり、武富士同様、会社更生法適用等の法的整理を申請することになりかねません。そうなると、届出のなされた過払い金は大幅にカットされ、届出のなされない過払い金は失権するので、消費者金融系の過払い金は、ほとんど存在しなくなると予想されます(なお、信販会社のキャッシングでも過払い金は発生し、これは、今後も存在すると思われます。)。

過払い金請求に関しては、それを専門に扱う弁護士が登場し、テレビ等で大々的に宣伝するようになっています。武富士以外の消費者金融会社も会社更生法適用等の法的整理を行うようになってしまうと、過払い金の発生を確認し、その届出を行い、カットされた過払い金の返還を受けることが前記弁護士の業態となると思われます。ただ、カット率によっては、弁護士費用の方が割高になってしまうことが予想されるので、過払い金返還に関する弁護士費用は低額化するでしょう。前記弁護士の業態も縮小を余儀なくされるかも知れません。

いずれにしても、今後、過払い金請求の一時的増加→消費者金融会社の法的整理→過払い金のカットないし失権という過程を踏んで、消費者金融系の過払い金は、ほぼ消滅し、ここ数年何かと話題の多かった(弁護士業界の内部だけかもしれませんが)過払い金問題は、次第に終息に向かうと私は予想しています。(談)