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北海道経済 連載記事

2010年10月号

第7回 悪徳商法の被害に遭ったら

「今なら○○が大変おトクです」──こうしたセールストークを誰でも電話などで聞かされた経験があるはず。しかし、うますぎる話には落とし穴があるもの。巧みな勧誘に乗せられて悪徳商法の被害に遭う人も少なくない。今回の「法律放談」は、悪徳商法からの救済について。(聞き手=北海道経済編集部)

電話機及び周辺機器のリース、ふとん、着物からパチンコや競馬の必勝法、さらには不動産に至るまで、ありとあらゆる商品やサービスにまつわる悪徳商法の被害が問題になっています。悪徳商法の被害者の権益を回復したり、裁判手続を代行したりすることも、弁護士の大切な役割です。

これらの悪徳商法の被害額は商品の種類や個々のケースによってさまざまですが、以前は到底使いきれない数量を一度ないし短期間に売りつけるなど、消費者の判断能力低下等に乗じた悪質な行為が見受けられました。

こうした行為を防ぐべく、改正特定商取引法が昨年12月に施行され、「過量販売」、つまり通常必要とされる量を著しく上回る数量を販売する行為については、契約後1年間は契約を解除できることになりました。

もっとも、昨年12月以前に結ばれた契約については、過量販売解除は適用されず、もっぱら、従前の特定商取引法に照らして「クーリング・オフ」(契約撤回)が可能かどうかがポイントとなります。訪問販売やキャッチセールス、電話勧誘セールスなどは、消費者に対して、事業者の商号・契約内容・クーリングオフが可能であること等の法定の記載事項が記載された書面が交付されてから8日間がクーリングオフ可能期間とされています(取引形態や商品の内容によっては、この期間が変わることもあります)。もっとも、交付された書面に不備があるときには、上記期間は進行しませんから、契約から8日以上経過していてもクーリングオフが可能な場合もあります。なお、従前は販売店との売買契約がクーリングオフの対象とされ、これに付随するクレジット契約については対象とされていませんでしたが、改正特定商取引法では、クレジット契約についてもクーリングオフの対象とされています。

クーリングオフの他、消費者契約法によっても救済される場合があります。事実と異なる説明をして勧誘を行ったとか、不確定な事項について「絶対に儲かる」といった断定的な情報を提供して勧誘を行った場合、業者が消費者の意に反して家に居座り消費者を困惑させた場合など、これらの不当勧誘を認識してから6か月以内は、消費者は契約を取り消すことができます。

さらに民法によっても救済される場合があり、暴利性があるなど公序良俗に反する契約は、無効となります(民法90条)。

注意したいのは、特定商取引法や消費者契約法が保護の対象に想定しているのが個人の消費者であって、被害者が事業者である場合、上記のような消費者保護規定が適用されないということです(個人消費者と同視できる小規模事業者については救済される余地があります。)。

また、投資目的のマンション物件など高額な商品の場合には、購入者が比較的裕福であるケースが多いこと、相応のリスクがあることを購入者も覚悟していたと考えられることから、裁判所は上記の規定の適用に厳格になる傾向があります。

これらの問題の解決には、高度な法律知識が必要で、プロの弁護士も定期的に勉強会を開いています。一般の方、とくに高齢者の方が悪質な業者に対抗するのは極めて困難です。本人やご家族が被害に気がついたり、怪しいと感じたりしたら、すぐに弁護士や消費者センターに相談することをお勧めします。(談)