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北海道経済 連載記事

2010年6月号

第3回 離婚を決意する前に…

いま、日本のどこかで2秒に1組のペースで離婚が成立している。離婚の調停や裁判の際に弁護士をどう利用するかで、その後の人生が大きく変わる。小林史人弁護士が独自の視点で解説する「辛口法律放談」。第3回は離婚について。(聞き手=北海道経済編集部)

離婚相談は女性から多く寄せられますので、以下は夫に婚姻関係破たんの責任があり、妻が離婚を求めているケースを想定してお話しします。

まず知っておきたいことは、離婚の際の慰謝料はそれほど多くないということです。例えば離婚原因が夫の浮気で、結婚から10年程度が経過している場合、裁判において認定される慰謝料の金額は100万~150万円といったところです。夫が浮気相手との間に子どもを作った、夫が妻に暴力を加えたなどの酷い事情があっても上限は400万円程度です。逆に婚姻期間が短かったり、離婚の原因になるような明確な責任が夫になければ、離婚自体が認められず、離婚できても、慰謝料は無しということもあります。離婚の際には財産分与も行われますが、これは、結婚後に築いた財産が現存している場合であり、低額にとどまることも多く、離婚後、元妻が長期的に生活を支えていくには不十分なことが多いです。このため、慰謝料を当てにして離婚に踏み切ることは非常に危険であり、離婚後の生活が成り立つか見極めた上で、離婚の選択をすることが重要です。私が相談を受けた事例のうち、離婚に向けて具体的な行動に着手する事案は3件に1件です。

さて、当事者同士が裁判所を介さずに合意して離婚することを「協議離婚」といい、これが難しい場合に裁判所に調停を申し立てます。調停が不成立に終われば、妻が離婚を求め、夫を相手どって離婚訴訟を起こすことになります。多くの場合、裁判の途中で和解が成立して離婚することになります。夫婦の間に子どもがいる場合、妻が希望すれば、妻が現に子どもを養育している限り、ほとんどの場合、親権は妻に属します。
調停や判決で離婚が成立し、元夫が慰謝料を払うことになったとしても、元夫がそれを履行するとは限りません。給与の差し押さえができれば確実ですが、元夫に差し押さえの対象になる給与や財産がなかったり、行方不明になってしまう可能性もあります。このため希望通り離婚しても、経済的には厳しい状況に置かれている元妻が多いのが現状です。

離婚を検討する際、留意すべき事項として「婚姻費用分担調停」があります。妻が籍をそのままにして夫と別居し、夫と同等レベルの生活ができるよう、生活費の負担を夫に求めるものです。場合によっては、妻にとり離婚するよりも有利になるケースもあります。
婚姻関係破たんの責任のある夫からの離婚請求は、未成年の子がいる限りは、ほぼ認められないので、夫としては協議離婚をするしかなく、離婚の合意を取り付けるため高額の慰謝料を提示してくることがあります。この場合は、慰謝料が高額となります。

「夫が浮気した。離婚するつもりはないが、浮気相手に慰謝料を請求したい」という相談もあります。浮気は夫と浮気相手の「共同不法行為」ですので、夫と離婚せず許してしまうと、いわば共犯の1人を許すことになってしまうので、裁判で浮気相手から多額の慰謝料を得ることは基本的にはできません。

離婚に関する弁護士費用ですが、着手金が25万円程度、成功報酬は、(1)慰謝料が支払われる場合は、その1割、(2)慰謝料が支払われず、離婚のみが成立した場合は、10万円程度、(3)養育費が支払われる場合は最初の2年分の1割といったところでしょう。(談)