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北海道経済 連載記事

2010年4月号

第1回 交通事故の被害者になったら

素人にはわかりにくい法律問題を小林史人弁護士が独自の視点で解説する「辛口法律放談」。第1回は、弁護士のサポートを受けることで金額が大きく変わってくることもある交通事故の損害賠償について。(聞き手=北海道経済編集部)

弁護士というと、なにか縁遠い存在に感じる人が多いのかもしれません。しかし、弁護士を利用して自分の権利を確保すべき場合があります。

たとえば交通事故で被害者になった場合です。あなたが横断歩道を歩いていて、自動車にはねられてケガしたとしましょう。運の悪いことに、軽い後遺症が残ってしまいました。しばらくして、加害者が契約している損害保険の会社から、示談金の提示があるはずです。その額に納得できなかったら、示談書にサインする前に、弁護士に相談することをお勧めします(その際、まずその弁護士が保険会社の代理人でないことを確認しておきましょう)。加害者が任意保険に入っていて、過失が加害者にあれば、裁判を起こすことで保険会社の提示額よりも多くのお金が支払われる可能性が高いためです。

交通事故のあと、加害者(の保険会社)から被害者に支払われるお金には、①治療費②休業損害補償③入通院慰謝料④後遺症慰謝料⑤逸失利益などがありますが、このうち④⑤については、損保会社の提示額と、裁判所基準によって算出される金額の間に、大きな差があります。

私が手がけた具体的なケースでは、被害者に最も軽微とされる14級の障がいが残りました。保険会社が④後遺症慰謝料として40万円を提示したのに対し、裁判所基準だと110万円となります。⑤逸失利益についても、裁判所基準では原則的に被害者が67歳になるまでの年数に基づき計算されます。このケースでは②③④⑤で総額数百万円の差が出ました。

深刻な後遺症が残ったケースでは、損保会社の提示額と裁判所が示す金額の差がさらに拡大する傾向にあります。被害者のその後の人生は慰謝料の多寡で大きく変わってきますので、法律や裁判所によって認められている権益を最大限守りたいものです。

裁判所のこのような見解はすでに定着していますので、損保会社を相手に裁判を起こせば、判決に至る前に、当初の提示額よりも金額を上積みするかたちで和解が成立するのが一般的です。

なお、時効にかかると権利が消滅してしまうので、事故日から3年以内に手続きをとったほうが安全です(自賠責保険の被害者請求は事故日から2年で時効)。

弁護士費用がいくらになるのか心配されるかもしれませんが、このような裁判では、裁判所が支払いを命じるお金に弁護士費用として1割が加算されることが多いので、これでかなりまかなえます(この1割のほか、訴額の3~5%程度の着手金と必要経費数万円がかかります)。また、裁判は事故直後に警察が集めた証拠などに基づいて、裁判官と双方の弁護士によって進められるため、被害者本人が法廷に立つことは、まずありません。

慰謝料などの金額は事故状況や過失割合、後遺症の内容や程度によって変化します。具体的な事例については、弁護士や法テラスに相談してみてください。(談)