3.必要なスキルについて

  それでは、どうすればテープ起こしの仕事を始められるか?その前に、仕事の流れを簡単にご紹介します。

 まず、メールまたは電話等で申込みを受けます。それから、内容(件名・録音時間・納期・納品方法等)を確認して見積りを出します。直接打ち合わせが出来る場合は出向いたしますが、遠方で出来ない場合は書面でもって最初に諸条件を詳細まで決めておくことがベストです。

 さて、いよいよ作業に入ります。お預かりしたテープを必ずダビングします。テープ起こし用の専用機器を使用して音声を聞きながら入力します。起こし方は人によって様々だと思いますが、私はある程度聞こえるままに素起こしを集中力が切れるまで続けた後、戻って誤字・脱字がないかを見直します。難聴テープの場合はプリントアウトして後から添削するケースもあります。

 最後に、もう一度テープを頭から聞き直しながら全体的なチェックを行います。成果物を納品方法に従って納めると同時に、マスターテープを返送し、請求書を発行します。これで作業は終了ですが、先方からの入金を確認したら連絡を忘れないようにします。
      
 英語ではテープ起こしをする人のことを「transcriber」(トランスクライバー)と言います。ところが日本では「トランスクライバー」と言えばテープ起こし専用機器のことを指します。テープ起こしをする人の肩書きは「テープライター」とか「テープリライター」が多いのですが、これらは日本独特の造語です。

 ここで、トランスクライバーという機械について少し説明したいと思います。本体は普通のカセットテープレコーダーですが、再生・停止・巻戻し・早送りボタンの他に話速変換や音質やテープ巻戻し長さの調節つまみが付いています。これにヘッドホーンとフットコントロールをつなぎます。このフットコントロールが優れもので、PLAYスイッチを踏むと再生され、足を離すと自動的にテープが巻戻されて止まるのです。入力の手を休めることなく、聞き直したり確認したりできるわけです。

 実は、音声を聞き取りながらパソコンで文字入力するという作業は、タイピングが出来る人なら誰にでも可能です。現に専門業者に依頼せずに自分達で空いた時間に済ませてしまっている会社もあると思われます。しかし、このテープ起こし専用機器を装備している方は稀ではないでしょうか。

 普通のテープレコーダーで再生しながらの入力も不可能ではありませんが、かなり悪戦苦闘すると思われます。トランスクライバーを使用するのとしないのでは、作業速度に大きな差が生じます。テープ起こし業を専門とする以上、必要不可欠なものであると私は思っています。

 トランスクライバーと同じ働きをする「おこしやす」というテープ起こし専用ソフトも存在しますが、これもまたテープ起こし業者にとってかなり重宝なソフトで、手放せないアイテムです。

 テープ起こし作業において必要な技術は、やはりブラインドタッチでの入力でしょう。これは、どんな入力業務でも同じですが、いちいちキーボードを見ながら入力していたのではスピードが落ちます。キーパンチにまだ自信のない方は、まず通信講座を受けるか、どこかの会社に所属して実務を経験しながら身に付けることをお勧めします。個人で営業されるにはクリアされていなければならない必須条件でしょう。

 ただ、タイピングの技術もさることながら、一番求められる能力は「検索力」「集中力」だと思うのです。知らない言葉はネットや辞書を利用してとことん調べまくります。打ち込みしている時間より、むしろ検索している時間の方が長いくらいです。

 そして、いかに集中して短時間で多くの文字を打ち込めるか。何か気になることがあったり、何かをしながら空いた時間を利用しようなどと考えると、なかなか効率が上がりません。とにかく、正確さはもちろんですが、スピードが命なのです。これらは、スキルと言うよりも適応力かもしれません。  

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