2.テープ起こしって何?

 「テープ起こし」という言葉を聞いたことがありますか?多分、この業界に近い方以外はほとんど初めて耳にする言葉だと思います。なにしろ、税務署に申告に行った時も、悲しいことに職員さんに「初めて聞いた」と言われてしまいました。

 やっと最近になって、雑誌や新聞の広告欄に「テープライター」という見出しで講座の宣伝等が掲載されたりしていますので、目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 新しい業種なのだと言ってしまえばカッコイイのですが、それだけ一般的に知名度が低いので、まだまだこのように「音声を文字に書き起こす」という作業を仕事としている人がいるということを知らない方が大勢いらっしゃるのが実情だと思います。

 因みに英語ではどう表現するのでしょう?アメリカ人の知人に私の仕事内容を説明したら、それは「transcribing」(トランスクライビング)とのこと。「transcribe」を英和辞典で調べると1.書き写す、2.転写する、書き換える(速記ノート、外国文学、口授などを普通の文字、自国語文字、タイプライターなどに)とあります。
 
 いつ頃から行なわれていたのか定かではありませんが、「ソフィーの選択」というユダヤ人を描いた映画の中で、主人公がラジオ(無線?)のようなものを聞きながらタイピングをしているシーンがあります。時代は第二次世界大戦前、もしかしたらこれが原点なのかなと興味深く観た記憶があります。

 録音機器が現在のように発達していなかった頃には、「速記」という作業が一般的だったのだろうと思います。話された言葉を、特殊な速記文字を使用して一瞬のうちに書き取り、更にそれを普通の文字に直して編集していたのでしょう。

 小学生の頃に、早稲田速記の通信講座を受けたいなどと、かなり無謀な申し出を親にしたことがありました。今考えると小学生に習得できるような代物ではなかったので、もちろん却下されましたけれども、自分が将来、速記から発展した「テープ起こし」に携わることになるとは夢にも思っていなかったでしょう。

 テープに録音されたものを書き起こして保存する目的とは何でしょう?

 人間の口から発せられる言葉を、耳から聞いて、それをそのまま聞いただけで終わらせないためです。しかも、その場に居た人だけが知るだけではなく、他の多くの人にも知ってもらいたい言葉があります。

 起こされた文章は目的によって様々な形で公表されることになるわけです。資料として回覧されたり、読み物となって出版されたり、ホームページに掲載する場合もあるでしょう。ただ素起こしするだけではなく、文章を読みやすく修正したり、指定された字数内で要約して編集しなければならない場合もあります。

 また、裁判所関係や議事録などの公的機関における重要文書の類は、一文字たりとも間違いの許されない正確性を要する仕事であると共に、守秘義務も絶対厳守となってきます。それらを前提に、テープ起こしを専門とする入力者はスピード(入力速度)を、まず磨いていかなければならないのです。

 その辺は、次の「テープ起こしのスキルについて」で述べさせていただきます。 

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