1.テープ起こしを始めたきっかけ

 まず自己紹介をさせていただきます。地元旭川で生まれ育った、特に何の取柄もない平凡な娘でした。活字に対する興味は人並みで、小学生の頃は放課後よく図書室に遊びに行ったりもしましたが、幼い頃から難しい本をガムシャラに読んでいたという程ではありません。

 性格的に何でも人に頼るより自分でやってしまう傾向にあり、習い事も自分から親にねだってやらせてもらいました。積極的というよりも、好奇心旺盛といった方が良いかもしれません。ピアノ・習字・珠算(そろばん)など、今思うと昔から手先を使う作業が元々好きでした。

 外国に対する興味が強かったので、英語関係の学校に進学しました。残念ながら、語学追求の道を極めるまでには至らなかったのですが、英会話はテープ起こしに重要な「聴力」にかなり依存する部分が大きいので、経験は無駄ではなかったと思っています。

 卒業、就職、結婚を経て出産。子供の世話はもちろん忙しいのですが、働くことに生き甲斐を求めるタイプだったので、赤ん坊を実家に預けて、その当時やっと世に出始めたばかりのワープロなるものの講習に通いました。検定に合格し、そのお陰で印刷会社への再就職もゲットできました。

 この会社での実務経験が今の私を支えていると言っても過言ではありません。主に文字入力の仕事でしたが、ある時、初めて耳にする言葉「テープ起こし」という作業を依頼されたのです。テープに録音された音声をヘッドホンで聴きながら、自動巻戻し機能が付いた特殊なプレイヤーを駆使してパソコンに文字を入力していく。

 最初は聞き取りづらい音声等に少々梃子摺りましたが、慣れてくると紙の原稿とパソコン画面の両方を見ながら打ち込む作業よりも、耳から原稿内容を聴き取り入力画面だけを見ながらインプットできるこの作業の方が、もしかしたら楽なのかもしれないと思い始めました。

 事情があって退職することになり、その後何年かブランクがありましたが、今や我家にもパソコンがいつでも使える状態にある。ネット検索で「テープ起こし」の個人事業者の方のサイトを覗いたり、私は受講していませんが通信講座の存在も知りました。そこで、折角身に付けた技術を眠らせておいて良いのか?と言うことで、思い切って個人事業者としてのスタートを切ったわけです。

 今や「テープ起こし」は少しずつメジャーになりつつあり、パソコンを利用してこの仕事を始めたいと思っている方が結構いらっしゃるのでは?でも、思い立ってすぐ簡単に始められる仕事ではない。確かに文字入力自体は単純作業です。だからと言ってキータッチができればそれで良いというものでは決してありません。

 聞いたこともない言葉が出て来ます。パソコン操作だって色々な場面に遭遇するでしょう。営業から経理まで全部自分でやらなければなりません。他人を頼らず自分で解決できるでしょうか?根気よく検索したり納得いくまで調べたりすることが苦にならないですか?

 ひとりぼっちの孤独な作業なのです。なのに仕事を受注するには外へも積極的に出て行かなくてはならないのです。矛盾しているようですが、自分1人で何でもこなしながら、人とうまく係り合っていかなければいけません。

 私の経験上から、この仕事に必要なものは「自立心」「探究心」「向上心」そして「運」だと思います。偉そうなことを書きましたが、次はもっと「テープ起こし」という仕事内容について噛み砕いてみたいと思います。

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