5.テープ起こしの今後の展開

 「テープ起こし」を発注する側の皆さまは、どのような録音方法をとっていらっしゃいますか?私はまだ現場に立ち会った経験がないのですが、多分、マイクを使用してテープレコーダーで録音されている方が大多数だと思われます。

 「テープ」起こしなのだから、カセットテープもしくはビデオテープに録音された音声を書き起こすのが基本なのですが、その原稿となる媒体は、今や必ずしも「テープ」とは限りません。デジタル技術の進歩により、多くのものがアナログから変わりつつあります。

 例えば、文書もわざわざ印刷せずにネット上で回覧可能ですし、写真もデジカメやスキャナの発達でいちいちプリントせずに鑑賞できます。少し出遅れた感のある音声のデジタル化ですが、取り扱いメディアはMD、マイクロカセット、CD−R・W、MOと広がり、徐々に浸透しつつあります。

 そして、カセットテープレコーダーに代わって普及しつつあるのが「ICレコーダー」という録音機なのです。

 この優れものは、カセットテープレコーダーに比べて、かなりのメリットがありそうです。まず、簡単にパソコンにデータを取り込めるので、メール添付して送ったり、サイズが大きい場合はCD−Rに焼き付けて配ることもできます。また、嵩張るカセットテープと違って、スマートメディアやメモリースティックといった超薄型でコンパクトなメモリカードに記憶できるので、データの受け渡しには最適です。

 また、テープだとダブルカセットで時間をかけてダビングしなければならなかった作業も、パソコンでコピーすればあっという間です。その上、例えば128MBのスマートメディアなら40時間以上もの音声録音が可能ですから、なんと120分テープの20本分です。そして、何と言ってもデジタル化されたデータは劣化しないので半永久的。カセットテープのようにからまったり、切れたりする心配が全くないのです。

 難点は強いて言えば、メーカーによってフォーマットが異なり互換性がないので、機種ごとの再生ソフトが必要になることと、音質はかなり高度で講演等には最高なのですが、接続マイクなしでは座談会など大人数の会話の録音には向かないかもしれません。

 しかし、ほとんどの点で録音側にとっても、起こし側にとっても、操作に慣れてしまえば今までのテープよりも便利でコストパフォーマンスに優れていることは一目瞭然なのです。

 インターネットの普及に伴って、今後も画像や音声のデジタル化は必須です。今までのカセットテープに録音された音声を文字に書き起こすというこの作業も、いずれはネットを通して送付されたデータをパソコンで直接再生させながら文字入力するという方向へ向かっていくでしょう。

 近い将来、ブロードバンドによる光ファイバーの普及により、データ入稿受け付け、定型フォーマットのHTMLやPDFに流し込んだ形の納品が当たり前、という時代になるかもしれません。

 そうなったら、「テープ起こし」という言葉は、やっと定着したと思った途端にあわや消えてなくなってしまうかもしれない運命なのですね。しかし、IT技術の発達は目覚ましいものがあります。

 私の息のあるうちに、そんな体験をしてみたいものです。いいえ、もう目の前に来ているのかもしれませんね。

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