<私のスタンス>
中学高校の頃から基本的にずっと独習。立ち読みで好感触を得た本を一分野につき3〜5冊程度買い、これらを平行して読み進めて、著者による書き方や視点の違いを楽しみつつ知識を得ていくスタンスである。大学に入ってからは5冊に収まらないこともしばしば。
・「橋元流解法の大原則・1」「橋元流解法の大原則・2」橋元淳一郎著、学習研究社 ★★★★★
私が高校時代に隅から隅まで熟読した、とても有名な物理の受験参考書。1巻も2巻も同じくらいお勧め。大事なポイントに絞ってイメージ重視で記述されているが、かといって受験で役立つテクニック的な記述がなおざりにされているわけでもない。網羅的な本ではないので、抜けている分野は他書で補う必要はあるが、この本の扱っている範囲に限ればその範囲はこれ一冊で十分深い部分まで掘り下げられている。また、練習問題はレベルが高いものもあるが内容は精選されているので、実際に手を動かして全ての問題を自力で解けるようにしておくと良いだろう。
内容としてはコンデンサーとドップラー効果の部分が特に分かりやすかった。また、核物理の部分は読み物として面白い。
なお、同著者が書いた大学生向けの力学の本『単位が取れる力学』は内容が初歩的なので、この本ほどお勧めではない。
・「解法の手びき 数学1」矢野健太郎著 科学新興社 ★★★★
知人に貰ったので使った本。自分で選んだ本ではなかったが十分使えた。定理の証明をきちんと載せているので独習しやすく、中学生のときでも読めた。受験参考書の中では書き方がかなり検定教科書的であり、論理の飛躍があまり無いので安心して読める。
この本で一番良いと思ったのは、やたらと『必要十分条件』を強調していて、式変形で⇔(必要十分条件を示す記号)を多用しているところ。この本のおかげで、「この操作は必要十分条件を満たしているのだろうか?特に十分性は確保されているだろうか?」と論理を逐一、考えるクセがついた。
…と、結構褒めてはいるが、他の分野では「解法の手びき」は使わなかったw。著者のヤノケンさんには大学に入ってからもお世話になった(後述)。
・「キーポイント力学」吉田春夫 岩波書店 ★★★
大学1年時に使用。かなり読みやすかったことは覚えている。力学は後に学長になった小宮山教授の授業ノートを一番使ったので、特にコレ!という本はない。
・ファインマン力学
日本語訳が拙い、実は初学者向きではなく既習者向け、とよく言われるファインマンシリーズ。原著を読んでないので邦訳のレベルについては分からないが、既習者向けというのは頷ける。間違っても試験直前に縋りつく本ではないし、あまりにも冗長な部分があるので読むのにそれなりの忍耐力を必要とすると思う。
F=maが出てくるときに相対論を考慮した式を載せたり、電磁気学の導入部分でも F=qE+qv×Bとローレンツ力を必ず記載したり、『これは正確には正しくないので後述する』などと一文を加えていたりと、和書ではあまり見られない心配りが嬉しい。
内容的には、相対性原理を用いて運動量保存則を説明する部分や、ベクトルと座標の関係を説明する部分が特に分かりやすかった。気長に、そして真剣に適宜自分でまとめメモを取りつつ読まないと私の場合は身につかない本だと思った。
・「ゼロの力学」 福永法源著 アースエイド ★
宗教団体『法の華』代表で「天声を聞く唯一の者」と自認しておられる福永さんが出した力学書。本人ではなくゴーストライターが書いたことが明らかになっている。『いま最高ですか 源き上がる喜びの毎日』『最高最高人間って最高』といったフレーズに魅かれる無茶したい人にお勧め。本書は絶版であるが、オークションで1円取引されているので入手は容易。ありがたや、ありがたや〜。
以上、1ページも読んでない私の感想。
・あとは、古くてマイナーな本だと思うが図書館で見かけた「力学」川口光年(1981年)という本が読みやすくて大学1年のときに暫く借りていた。
・「電磁気学のききどころ」和田純夫著 岩波書店 ★★
先輩からの貰いもの。2/3ほどしか読まなかった。感想は可も不可もなし。この本だけではよく分からなかった。
1年のときは本を読むというよりも、ひたすら演習問題を解いていた記憶がある。授業で扱った演習問題50題ほどを全て解けるようにしたら試験問題は完答できたし、何となく「電磁気学ってこういうものか???」と少しだけ分かったような気になったが、正直ベクトル解析との格闘で労力の殆どを費やしてしまったように思う。
なお、著者が講義をしている総合科目「振動波動論」に顔を出してみたところ、殆どの時間をただ自著をモゴモゴ読みあげているだけで、あまり学生も出席していなかった。
・「微分積分(理工系の数学入門コース1)」和達三樹著 岩波書店 ★
岩波のコースもの第1巻。簡潔にまとまっている無難な本。とりたてて特長がないので、すぐ売ってしまった。初学者にはもっと冗長な本の方が良いと思う。
・「キーポイント多変数の微分積分 (理工系数学のキーポイント (7)) 」小形正男著 岩波書店 ★★★★
大学1年の頃、力学で出てきた線積分が意味不明で途方に暮れていたときに役立った本。重点的に扱っている他のポイントはヤコビアンやラグランジュの未定乗数法などで、着眼点がとても良い感じである。キーポイントシリーズの中でも一押し。
※当時は今と違いネット上に理数系の文章がそれほど落ちていなかったため、堅い本で詰まったら「キーポイント」シリーズか「なっとくする」シリーズに縋る程度だった。
・「なるほど微積分」村上雅人著 海鳴社 ★★★★
大学1,2年程度を対象とした微積分の本。著者は工学畑の人らしく、確かに理工系の数学ユーザー向けの本という印象を受ける。文章での説明が多く、ある定理がどんな役に立つか、定理がどんなことを意味するかを記述してるところがこの本の魅力。実数論やε−δ論法には全く踏み込んでいない。フーリエ・ラプラスについての章がある一方で、多変数関数の微積分についてはさわり程度にしか触れていないのは残念。
3章のオイラーの公式を導く箇所では、級数展開の式にiθをブチ込んで実部と虚部を比較して済ましているが、終章で『この操作は虚数でも成り立つか分からない。(中略) 無限級数において項の順序を変えて良いことは保障されてない上に、級数をふたつの場合に分けて別な無限級数をあてることも保障されていない。つまりオイラーの公式導出では、厳密性を無視すれば何重もの禁を犯していることになる』と記載があり、ここの部分は終章ではなく3章に廻した方が良かったのでは?と感じた。
この終章「微積分と無限」が数学読み物としてとても面白く、特にお勧め。もともとは図書館で借りていた本だったが、この終章10ページほどを何度も読みたいがために本を購入したぐらいである。
(この本は私が微積の単位をとった暫く後に読んだので、初学者が満足できるかは不明。でも終章は誰が読んでも面白い、はず。)
・「解析入門」田島一郎著 ★★★★★
ε−δなども扱っているかなり数学科寄りの本。定理のポイントや証明のコツなどが丁寧に書かれていて、とても分かりやすい。昔の名著と言われる本は特別に頭の冴える人向きで、普通の人や初学者向きでないという先入観を持っていたが、この本はどうしてどうして初学者にこそお勧めできると思う。
・「微積分の根底をさぐる」稲葉三男著 現代数学社 ★★★★
かなり個性的な副読本。こんなタイトルをつけられたら買わずにはいられない。相当古い本が再販されたものだが、印刷以外はあまり古臭さを感じさせない。前書きにある通り、初学者が戸惑うであろう箇所に対して著者なりの解答・解説がなされている。中には解答・解説まで至らず、著者の印象を書いてるだけのtopicsもあって面白い。例えば平均値の定理の条件で、連続の区間が閉区間で微分可能な区間が閉区間として食い違っていることに関して数ページを費やしてクドクド解説している。延々と関数の定義域を明記すべきと力説していたりもする。このクドさは好きな人だと病みつきになるだろう。
・東大の清野和彦さんが公開している微積分とベクトル解析のpdfファイル ★★★★★
詳細はググれば出てくる。公開しているpdfを読んだところ、解説に充てている文章量が凄まじく、神レベルの分かりやすさだった。この定義にはどういう意味があるのか、この定理は実際にどういう所で使うかなど、清野氏の懇切丁寧な説明は人類の知的財産レベル。数学って面白いものだということを思い出させてくれる。駒場時代にこのpdfや講義に気付いていたら、間違いなくモグリで講義に忍び込んでいたことだろう。
色んなファイルがupされているが、とりあえず2008年の『電磁気学で扱う数学』の第1回か『数学I』のε-δの解説を読んでみて欲しい。『多変数関数』での『全微分は現代数学の用語じゃない』という記述も目から鱗。
・「解析演習」 野本、岸著 サイエンス社 ★★
先輩に貰った演習書。高校の頃は問題集を1冊完璧にするのが当たり前だったので、それと同じ姿勢で挑んですぐに挫折した。三角不等式や二項定理を使う証明問題の他、講義では全く出てこなかったsupやinfに大いに戸惑った。証明問題が多いのが特徴だろう。
サイエンス社からは他に2冊微分積分の演習書が出ていて、それらはこの本よりも易しめ。特に寺田の一番新しいヤツはドリルみたいな感じ(こっちは全部解けるようにした)。
・「ゼロから学ぶ線形代数」小島寛之著 講談社 ★★★★
「3次の行列式が平行六面体の符号つき体積を表すことを強調した本って案外少ないよな〜」と思っていたところ、この本の著者も同じことを考えていたようでイの一番に記されていた。この本、2x2行列式についても平行四辺形の符号つき面積であるという観点から説明していて、着眼点が他の本とは違い面白い。これ一冊で全て分かるという感じはしないが、読み物的な面白さ・分かりやすさを感じた。この種の本にしては証明にも気を遣っているところも好印象。なお、『練習問題は簡単なものばかり』と書いてあるが、私にとっては結構難しい。
(この本は私が線形代数の単位をとった暫く後に読んだので、初学者が満足できるかは不明)
・「なるほどベクトル解析」村上雅人著 海鳴社 ★★★★★
「なるほど」シリーズ、ベクトル解析の巻。最初からこの本を使っておけば良かったと思わせる内容で、ベクトルの積分の章が特に分かりやすかった。「なるほど」シリーズ全般に言えることだが、全体的にテンポが良くてサクサク読み進めることができ、私に合っている。具体的な例題が適度に載っているところも◎。
amazonの書評でMOさんという人が誤植を載せてくれている。なお、シリーズ名が「なっとくする」シリーズと似ていて混同しやすいw
(この本は私がベクトル解析の単位をとった暫く後に読んだので、初学者が満足できるかは不明)
・「ベクトル解析」H.P.スウ著 森北出版 ★★★★
ベクトル解析の本は他の分野と比べると雑な本が多いように思うのだが、如何だろうか? そんな中でもこの本は地道&丁寧に記述されているので読みやすかった。
(この本は私がベクトル解析の単位をとった暫く後に読んだので、初学者が満足できるかは不明)
・「演習ベクトル解析(サイエンスライブラリ演習数学9)」 寺田文行、坂田ソウ、齋藤偵四郎著 サイエンス社 ★★★
黄色い表紙でお馴染みのサイエンス社演習シリーズもの。解き方のポイントや指針を示してくれたり、分かりにくい式変形の解説が載っているわけではなく、ただただ普通に解答が載っている。当時はこのシリーズか共立詳解ぐらいしかなかったので使っていたが、今ならもっと分かりやすい本があるはず。
ひたすら電磁気の演習問題を解くだけでも充分かも?
・「物理数学の直感的方法」 長沼伸一郎著 通商産業研究社 ★★★
評判通り、第5章のrotについての記述が本当に分かりやすかった。
・「dxとdyの解析学―オイラーに学ぶ」 高瀬正仁著 ★★★★
法則は『発見』されるものであって、『証明』というよりも『確認』されるもの、と。
・「自然の秘密をあばいた人びと」A.S.グレゴール著 ★★★★
子供向けの科学啓蒙書。この本を夢中で読んでいるうちに朝を迎えていたのが、私の人生初の徹夜だった。思い出の本だったので挙げてみた。
・「怠け数学者の記」小平邦彦 ★★★★★
同著者の「解析入門」は見事に第1章で挫折したが、この本は最後まで読めた。なぜなら、この本はエッセイ・対談集だからであるw
『数学教育を歪めるもの』等のコラムが面白い。何気にp.35に「現代の量子力学」で有名なJ.J.Sakuraiが出てきている(高校生の桜井君)と思うが、ググってもこれに触れた文章は見つからなかった。
・「アインシュタイン・ロマン」NHKスペシャル ★★★★★
中学時代にこれを見てしまったせいで、20代前半の人生が悲惨なことになったw
自分の能力を考えずに進路選択してしまうといけませんw
OPテーマ曲:モーツァルト「ドン・ジョバンニ」のテーマによるバイオリン協奏曲。