北海道の本

北海道に関する本のレビュー

■ふるさと早わかり:北海道高校地理教育研究会

・高校の地理の先生達がまとめた北海道地理の本。図表・地図が豊富で道内の主要都市は網羅しており、高校というより小中学校の地理学習に適した一冊。高校の先生だけあって説明も分かりやすく、私のような社会人が読んでも楽しめる。

・ただし、流石に出版が●年だけあって内容的には古い。平成の市町村合併前であり、清田区も分区してない頃のため注意が必要。

・以下、この書籍にあった面白い topics10。
(01):北見は市街地が全体的に東に傾いている。このため生活排水が自然流下で集まるため下水道の普及率が高い。鉄道は西部では地下、東部では高架上を走る珍しい景観になっている。

(02):北広島市には道内最大面積の団地である北広島団地がある。しかし市では上水道を隣の恵庭市の漁川に依存しているため人口制約があり、水道代も高い。

(03):函館や室蘭における商業中心地域の移動。函館では弁天・十字街地区→駅前→五稜郭へ、室蘭では蘭西→蘭東。

(04):農業話。
大野町・七飯町は歴史ある「道南のベジタブルファーム」だが、道内にしては小規模経営。
余市町・仁木町は東西の山地のより風が弱い「全道一のフルーツランド」。
喜茂別町はアスパラガス栽培日本一(主に缶詰クレードル用)で有名だったが斑点病やガリウム菌などで減収。
今金町(いまかね)では東西に後志利別川が貫流し、ブランド化「コンキンイモ」。
伊達農協が「北の湘南 伊達野菜」謳う。
斜里町+清里町+小清水町は日本一のポテト王国で全作付面積の9割がジャガイモ+テンサイ+小麦。
士幌町農協では太田寛一が中心となり農協による加工事業を進めた。
紋別市の漁獲高の4割がホタテで釧路市のメインはイワシとスケトウダラ。
北方領土では馬の飼育が盛んでカニ、コンブ、クジラ漁も。

(05):1950年段階では、苫小牧市の人口の半数が王子製紙関係者だった。

(06):札幌市北口再開発では細長いペンシルビルが建たないように高度利用地区に指定して再開発を進めた。また80年前後では百貨店が乱立したため、1982年に行政で出店凍結宣言を行った。手稲に砂丘があり、サッポロスイカ栽培で有名。札幌市内では「琴似」「平岸」など地域中心核を指定して都市計画を進めている。

(07):通過型の洞爺湖温泉、宿泊型の登別温泉。

(08):士別市=士別町(20000)+上士別村(7000)+多寄村(4000)+温根別村(4000)。のちに朝日町(2000)も。冬季の自動車テストコースといえば士別。

(09):かつて名寄本線や深名線もあった名寄市は交通の要衝として、人口3万人都市では他で見られないほどの出先機関や支店がある。

(10):留辺蕊町の総生産額の7割が木材関連産業。カラマツの集成材。置戸町の白い器「オケクラフト」はエゾマツ・ドトマツ。


■続・幌延町史

・市町村史の中では特に出来が良く、興味深い一冊。中でも町内の全集落(上問寒別や中問寒別ら)の歴史と現状、住人の思い出話を記載している部分が良い。

・稲作/畑作をしようとして挫折し、結局は酪農に落ち着くというのが基本的な開拓史。


■北海道の村おこし町おこし:札幌学院大学 1992年

・大学での6人分の講義録。池田町助役の大石氏の話はワイン作りや町政の裏話満載。道新の佐藤明氏の話は町おこしの具体例が多く面白い。

・以下、この書籍にあった topics6。
(01):昭和35年時点での十勝農業は6割が豆。池田町の丸谷町長「農業計画に果樹が入ってない。冬に枯れないものが良い」から適した作物を探しはじめた。

(02):町議会の反対によりブドウ苗木導入は町費ではなくブドウ愛好会の自費で行った。昔の日本では醸造系ブドウではなく生食系ブドウでワインを作っていた。苗木導入で100%生食用を手配したはずが、間違いで1%醸造系が入っていた。これが後に幸いする。

(03):町で酒を売る免許を取るのが大変だった。1963試験醸造免許 →1965本免許(限定) →1971永久免許。神戸市がバカやったせいで後に地方自治体に免許が下りなくなった。酒を自治体が直接作れるのは道内では池田、富良野、清里、新得のみ。

(04):置戸町は常呂川の最上流の町。川の最上流の町はどこも過疎で苦しむ。1964国の補助で図書館を整備する(全国に8か所、道内1か所)。その後、昭和50年代に町民1人当たりの貸出数が全国1位5回。

(05):オケクラフトのエゾマツ、トドマツはヤニや伸縮が激しいため本来は木工に不向き。人工乾燥による含水率の一定化、樹脂系の含浸硬化剤利用により克服している。

(06):一村一品運動で多いもの3つは味噌(道内では鷹栖と女満別)、ワイン、漬物。竹下内閣の「ふるさと創生一億円」、道・道新・NHKによる「北海道まちづくり100選」。


■東旭川の記憶〜次世代への伝承〜:東旭川まちづくり推進協議会

・旭川市の旧東旭川町地域の歴史についての本。東旭川地区では6つある市民委員会の所管する地域がそれぞれ独自の発展をしてきたため、6地域各々について詳しい記載がされている。

1:東旭川中央
2:旭正
3:日ノ出・倉沼「みのり」
4:桜岡
5:豊田「源泉」
6:米原・瑞穂「拓きし路」
各々、読み応えがある。

・旭山はシンボル。旭川市への合併後しばらくして東旭川町千代田/愛宕の地名が東光/豊岡に変更。学校名としては残っている。