しらかば法律事務所TOPメディア旭川 連載記事 世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』 > 第86杯「江戸言葉?」

メディア旭川 連載記事
世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第86杯「江戸言葉?」

江戸時代から用いられている言葉として「粋(いき)」があります。その意味は、江戸時代に生じた美的感覚、心意気で、身なりや振る舞いが洗練されていることとされています。「いなせ」も同じような意味です。江戸時代に若者の間で流行した髪型に由来しており、粋に比べて若者に対して用いられる傾向にあります。また、「小」をつけることも昔からの言葉の使い方だと思います。「小粋」何となくあか抜けている、ちょっとあか抜けている。江戸落語で名前に「小」を付けるのも同じ趣旨かな。小金治、小三治、小円遊など。師匠の弟子である、何となく名人の域に近づいてきた、といった意味でしょうか。ちょっとした面白い話のことを「小話」、胸がすっとする快さのことを「小気味良い」といいます。

次に、外で食事をする際も、江戸で使われていたと思われる言葉があります。「定番」「おきまり」「並」。全部、同じ意味です。江戸前の握り寿司、東京湾の魚介を用いた寿司を注文するときに使います。「おきまり」が小気味よくて、江戸っ子らしいさっぱりした感じがします。そうそう、握り寿司の具材のことを「タネ」といい、それを逆さ読みしたのが「ネタ」であるそうです。江戸前の握り寿司の「ネタ」は、ひと工夫された仕事がなされているのが良い。例えば、①酢で締める。サバ、コハダ、シンコ、アジなど。②漬ける。ヅケにする。ヅケマグロ。③煮る。煮つめを塗る。アナゴ、ハマグリなど。④茹でる。エビ・タコなど。これらが「ネタ」と言われてきました。あと、⑤焼く。卵焼きも「ネタ」です。江戸時代、寿司は、屋台で売られていたファストフードだったそうです。生のままでは、すぐに傷んでもたないので、酢で締めたり、熱を加えたりしたのだろうな。東京の寿司屋で、昔ながらの、江戸前の握り寿司を食べてみたいです。

食事が終わり、店を出る前に会計をする際、「おあいそ」という言葉が使われることがあります。ぼくは「チェック」「会計」という言葉は使いますが、「おあいそ」という言葉は使わないことにしています。「おあいそ」は、「お愛想」で、店側が使う言葉であり、それも気に入らない客に対して「愛想が尽きた」の意味で使う言葉らしいので、一見の客から使う言葉ではないと考えています。

昔から使われて続けてきた言葉は、それなりの意味があって、興味深いなと思います。