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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第85杯「平和主義者で護憲派」

人権擁護大会とは、日本弁護士連合会が主催するイベントで、人権擁護に関するシンポジウム、人権擁護に関する宣言の採択等を行う定期大会が開催されます。

広島市で人権擁護大会が開催されたときのこと、ホスト会の広島県弁護士会から、「広島平和記念資料館には見学に行ってください」「人権擁護大会期間中は、大会の登録票提示で入館料は無料」と、大会に出席しなくても良いから、原爆資料館には行くようにといったニュアンスの案内がありました。そこで、ぼくは大会を中座して見学に行きました。原爆投下当時の広島市の人口は35万人、犠牲者は14万人とのことで、市民の40%が亡くなっています。太平洋戦争を早期に終結させたとして、原爆投下を正当化する向きがあるがとんでもない話だ、戦時中だからといっても、やっていいことと悪いことがある、そんなことを考えて見学をしていたら、時間が経って、大会は終了していました。

同じようなことは、PTAの行事で生徒に同行して沖縄に行った時にもあります。ひめゆり平和祈念資料館で当時の記録に見入ってしまい、引率者に準じる立場でありながら、集合時間に遅れてしまいました。

戦後75年を経過し、戦争体験者は少なくなっています。学校でも太平洋戦争だとか平和憲法を教えるでしょうが、原爆資料館やひめゆり資料館に見学に行って、当時の記録や展示品を見た方が、身にしみて理解できると思います。ですので、修学旅行等では、そういう施設を見学コースに加えて欲しいところです。

戦争を知らない世代が日本を動かすようになり、憲法9条も改めようとする動きが出ています。ぼくは、平和主義者で護憲派なので改憲には反対です。原爆資料館やひめゆり資料館を見学したら改憲という話にはなりません。テロ国家への対応や平和維持のための国際協力の過程で自衛隊の派遣が必要な場面があることはわかりますが、憲法9条のおかげで、慎重な議論が行われ、なし崩し的な派遣は行われていません。憲法9条を改めてしまうと、そのような議論は行われず、徐々に必要以上に派遣することになり、そのうち、無条件にアメリカの同盟国として、日本が当事国ではない戦争に参加することになるのは目に見えています。そんなことは自衛隊員も望んでいないでしょうから、憲法9条を改めて自衛隊に憲法上の根拠を与えることは、自衛隊員も望んでいないと思います。