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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第83杯「大往生」

10月27日の朝、出かける用意をして車を出そうと車に向かったとき、運転席のドアのところで猫が死んでいるのを見つけました。思わず、「うわあっ」と声が出ました。自宅敷地に出入りしている野良猫には心当たりがなく、また、突然の出来事だったので、とても驚きました。交通事故に遭って、ここまで歩いてきて息絶えたのかなと思いましたが、外傷はなく、出血もありませんでした。苔が生えているところで横たわっていたので、寝ぐらを見つけて、寝ている最中に死んでしまったものと思います。野良猫にしては、丸々と太った猫で、食べるには困っていなかったようです。支援者がいて、餌を与えていたのかも知れません。太っているので心不全でも起こしてしまったのか、それとも寿命だったのか。いずれにしても苦しまずに死んだようなので、猫としては、幸せな一生を送った方だと思います。

「大往生」とは「苦痛や心の乱れがなく、安らかに死ぬこと」という意味で、派生して「立派な死に方」「長生きして寿命を全うしたこと」の意味でも使われます。ちなみに「往生」とは仏教用語で、「現世を去り、仏様がいる極楽浄土に往(い)って生まれる」という意味で、端的に言えば「死ぬこと」です。最近では中曽根康弘元総理大臣が101歳で亡くなったときに、大往生という言葉が用いられていました。中曽根さんの後継とされた安部晋太郎、竹下登、宮澤喜一、彼らの後継の橋本龍太郎の各氏が、すでに他界して12年~28年を経過していたことからすると、驚異的に長生きしたと言えるでしょう。それにしても、大往生の意味のうち「立派な死に方」って、どんな死に方なのかよくわかりません。死に方に立派も何もありません。立派な死に方があるとしても、人それぞれだと思います。

この猫君の場合、普段は姿を見せない、ぼくの所有地に勝手に入り込んで死んでおり、しかも、ぼくを驚かせていますので、ぼくからすると、立派とは評価できません。しかし、野良猫らしいといえばらしく、猫としては立派な死に方といえるのかも知れません。また、苦しまずに安らかに死んだと思われますので、中曽根さんと同じく、大往生と言って良いでしょう。

亡骸をそのままにしておくと、カラスなどに狙われて、無残なことになりかねません。そこで、市役所の担当部署に連絡して、適切に処理しました。猫君の冥福を祈りつつ、見送りました。