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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第78杯「9月入学」

新型コロナウイルスを封じ込むため、学校が休校となった関係で、入学時期を9月とする案が提唱されています。9月入学が導入されるとどうなるでしょうか。

まず、卒業式が夏休み前となり、受験の日程も変わります。すなわち、夏休み前の7月10日ころが卒業式、母の日(5月第2日曜)ころがセンター試験、父の日(6月第2日曜)ころから各校の入学試験となります。卒業ソングは春の歌が多く、「さくら」(森山直太朗)「桜」(コブクロ)などは夏の卒業式で歌うのは妙な感じです。そこで、歌詞を夏の言葉に書き換えると、全く別の楽曲となってしまいます。「春なのに」(柏原芳恵)は、その典型です。俳句では「卒業」や「入学」「新入生」などは春の季語ですが、9月入学導入により夏の季語に変わり、従前の名句にも影響するでしょう。

次に、夏にメインの大会を迎える部活動も多いところ、9月入学導入で部活動のあり方も変わります。高校野球の場合、8月開催を変えないと、夏の甲子園は、卒業式後に開催されることになります。卒業式を経た3年生もまだ在校生だから夏の甲子園に出場できます。そうすると、3年生は6月、受験勉強がピークの時に地区予選に出場することになり、日本学生野球憲章の基本理念である「学業との両立」は極めて難しく、甲子園に出場できるレベルの高校生が、難関とされる大学に現役で合格することは至難の業となると思います。また、夏の甲子園以前に、スポーツ推薦が内定することになるでしょう。そこで、これらを避けるため、開催時期を前倒しにして、夏の甲子園を春のセンバツの時期に、センバツを冬休みに開催することが考えられます。この場合だと、地区予選を2月に開催することになるので、雪国では開催が困難です。開催できても、屋外練習ができない時期に開催することになります。また、雪まつり・冬まつり・氷瀑祭りが開催される一方で高校野球の地区予選を開催することになり、妙な感じとなります。

以上のとおり、9月入学導入は、日本の文化、生活様式に重大な影響を及ぼすものと言えます。新しい生活様式と言ってしまえばそれまでですが、コロナウイルス対策のために従来の文化・生活様式を犠牲にするのも疑問です。また、3か月早めて1月入学も検討の余地ありでしょう。9月入学導入の是非は、コロナウイルスとは無関係に検討すべき問題と考えます。