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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第62杯「受験人生」

ぼくは、18歳から35歳までの17年間に、大学受験で2年、司法試験で11年、司法研修所の卒業試験で1年、受験生だった年度が14年度もあります。人生で最も貴重な時間である20代とその前後を、ぼくは受験生として過ごしました。端的に言うと受験に数多く失敗したということです。決して勉強が好きというわけではありません。

まず、大学受験に失敗しました。1年浪人している上、国立大学には合格できなかったからです。1年浪人して中央大学に入学しましたが、大学受験に成功したという気分ではありませんでした。中央大学は、八王子市郊外の山の中にキャンパスがあり、周りに何もなく、とても東京都内とは思えませんでした。学歴コンプレックスもかなりありました。

中央大学には司法試験を目指す勉強サークルが数多くあり、ぼくもいくつか入会試験を受けましたがあえなく不合格でした。司法試験には10回失敗しています。10連敗して、心が折れなかったことが我ながらすごいと思います。「負けを知らない勝利者はいない」スクールウォーズで有名な伏見工ラグビー部監督の言葉ですが、「負けばかりの勝利者もいない」わけで、負けばかりのぼくにとって勝利者になることは夢のまた夢でした。

司法試験10連敗のぼくでしたが、11回目に初白星をあげて合格しました。大相撲ならば11日目に初白星をあげても、既に負け越しており、番付は下がりますが、司法試験の場合は合格すると、今までの負けがすべて精算され、番付があがり、司法研修所という幕内に入幕します。

司法研修所に入所すると1クラスに10名位、東大出身者がおり、京大や早慶など難関と言われる大学出身者がごろごろしています。難関大学出身者でも、能力的・人間的にたいしたことない者も多く、とてもかなわないという感じではありません。今更ながら、難関大学出身者は大学受験用の勉強が得意なだけで、社会に出て活躍できる人間になるかは別問題だとわかりました。また、司法研修所では大学のブランドは関係ありません。大学を出ていない者もいるし、皆、司法試験に合格しているので、出身大学のブランドがどうのこうの言う者はいないからです。つくづく司法試験は、一発逆転の試験だと痛感しました。こうして、ぼくの学歴コンプレックスは解消され、司法研修所を卒業して、ようやく受験人生は終了しました。