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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第60杯「そば屋」

平成31年は、平成最後の年となります。唐突ですが「一杯のかけそば」という話を覚えているでしょうか。舞台は、大晦日、札幌市内のそば屋です。母と息子2人が閉店間際に入ってきて、3人でかけそば一杯を注文して分け合って食べる(そば屋の主人が気を利かせて麺を1.5人前にしています)、それが何年か続いたが、ある年から来なくなった、十数年後に3人でやってきて、夫の残した借金は全て返済し、息子2人は立派に成長して医師と銀行員になったことを報告し、かけそば三杯を注文して食べた、という内容です。平成の初め、バブル景気の最中に、人々の涙をさそった話です。渡瀬恒彦がそば屋の主人役でドラマ化されたと記憶しています。大量消費が当たり前の時代だったから、節約・倹約系の話が流行ったのでしょうか。平成は「一杯のかけそば」と共に幕を開けたので、平成の最後に回顧するのも良いと思います。

本格的な手打ちそばも良いですが、茹でてある麺を湯煎して温かいツユをかけるタイプも、気取らなくて良いと、ぼくは思います。

「一杯のかけそば」はフィクションですが、以下に紹介する3軒のそばは実在します。ぼくの好きな気取らないそば3選です。まず、宗谷本線の音威子府駅構内にあるそば屋の立ち食いそばです。創業は1933年(昭和8年)の老舗です。名物の黒いそばですが、なぜ、こんなに黒いのか不思議です。次に、函館本線の岩見沢駅前にある焼き鳥屋のかけそばです。モツ串とかけそばを取り合わせるのが、昔からのスタイルのようで、旭川札幌間の旧産炭地の焼き鳥屋でよく見られます。その中でもこの店のかけそばは、キングオブかけそばです。なぜ、キングなのかは食べてみればわかります。この2軒のかけそばは、昔からのスタイルを頑なに守っているという点で、ぼくの独断と偏見で北海道遺産と認定します。最後に、東京は高田馬場駅前にある某チェーン店の天ぷらそばです。受験時代によく食べました。サクサク感のない、もったりとしたかき揚げ(ショウガと桜エビ入り)をかけツユでしみしみにして食べる、うまかったな。至福の時でした。しかも当時(20年前です)200円でした。東京の某有名老舗そば屋の天ぷらそばは、3口で食べきれる程の麺に上品なかき揚げ1つで2800円です。果たしてどちらが真っ当なそば屋なのか。ぼくは、200円の方だと思います。