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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第57杯「小銭入れ」

最近、「小銭入れ」を紛失してしまいました。長年、愛用してきたもので、紙幣も折りたたんで入れて使っていました。これまで何度も紛失しているのですが、必死に捜索した結果、手元に帰ってきています。ですが、今回は、出てこないだろうと観念しています。紛失した場所が大阪であるからです。

なぜ、大阪かといいますと、今年は夏の全国高校野球が第100回の記念大会で、高校野球のコアなファンであると自認・自称しているぼくとしては、開会式と松井の始球式は必ず見ておかないと死ぬときに後悔するだろうと思い、甲子園まで見に行きました。一旦、旭川に帰ってきましたが、準々決勝を観戦しに、再度、甲子園に行っており、その帰りに紛失したからです。

開会式には、神戸から朝7時前に甲子園に向かったのですが、阪神電車の中では乗客が「もう行っても入れない」「無理かもしれないがとりあえず甲子園に行ってみる」などと口々に話しており、信じられませんでしたが本当で、外野席にしか入れませんでした。開会式終了後、チケットを買い直して内野席に入りましたが、物足りなさを感じ、不完全燃焼となったぼくは、記念大会ゆえに1日4試合実施する準々決勝を観戦するために、再度、甲子園に行ったのです。

準々決勝前日の3回戦の試合は内野席で観戦できました。隣の席の甲子園に毎日来ているというオヤジに、「明日は、近畿勢が3校(大阪桐蔭・報徳学園・近江)出るから、猛烈に混むぞ」、と言われ、それならということで、朝4時すぎに甲子園に行きました。オヤジの言う通り、というか、それ以上に混んでおり、朝4時の段階で既に内野席は売り切れのプラカードが出ており、係の人に「唯一望みがある」と言われた、外野席の列に並びました。甲子園と阪神甲子園駅との間を2往復するくらいの人が並んでいたと思います。

外野席で準々決勝4試合を観戦しました。第4試合で金足農が逆転サヨナラ2ランスクイズを決めて勝利し、これは良いものを見たと気分が高揚し、大阪なんばの「千とせ」で、肉うどんの麺抜きである名物「肉吸い」を食べたところまでは「小銭入れ」は存在していました。しかし、それが「小銭入れ」を確認した最後となりました。名残惜しいのですが、「逆転サヨナラ2ランスクイズ」を見ることができたので、高校球児のごとく、潔く、あきらめることにしました。