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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第48杯「フランダースの犬」続編

今年は戌年です。黄熱病の研究をして、自らも黄熱病で命を落とした野口英世のお姉さんは「野口イヌ」という名前でした。戌年生まれだったのでしょうか。「犬」と言えば、渋谷駅の「忠犬ハチ公」、「スヌーピー」、チキチキマシン猛レースの「ケンケン」、ソフトバンクCMの「カイくん」あたりが思い浮かびますが、ぼくの中では、「犬」と言えば、フランダースの犬の「パトラッシュ」がダントツです。ただ、物語的には全く納得いきません。ネロは、祖父と死に別れ、ミルク運びの仕事を絶たれ、家賃を支払えなくなって家から追い出され、放火犯の濡れ衣を着せられるなど、コゼツとその手下のハンスに酷い仕打ちを受けます。渾身の作品を応募したコンクールにも入選できません。すべてを失い、最後はパトラッシュと共に教会で凍死します。可哀想過ぎます。前々回も書きましたが、ハッピーエンドの続編が必要です。何とか救い出す方法はなかったのか?前日、大雪の中、ネロはコゼツの財布を拾ってコゼツ宅に届けますが、このときにネロとパトラッシュを保護するというストーリーが考えられます。財布をネロが届けてくれたことを知ったコゼツは反省し改心しますが、それなら翌朝まで待たずに、すぐに探しに行くべきでしょう。ネロとパトラッシュを保護しなかった場合、コゼツはネロに対する重過失致死罪か不作為による殺人罪、不作為による動物損壊罪(パトラッシュはネロの所有物なのでネロに対する犯罪となる)に問いたいところですが、残念ながら近代ヨーロッパには日本の刑法は適用されません。もう一つ、実は生きていたというストーリーが考えられます。この手法は、他の作品でも使われています。例えば「宇宙戦艦ヤマト」本編の沖田十三艦長は地球帰還を目前に息を引き取ったとされていましたが、以降の編で艦医の佐渡酒造医師の誤診だったとされ、沖田艦長の生存が確認されています。「フランダースの犬」の場合、ネロとパトラッシュは教会で凍死したと考えられていましたが、低体温症に陥って仮死状態であったものの、実は生きており、これに気づいたアントワープの町医者の手厚い看護により蘇生しました。その後、回復したネロはコゼツの謝罪を受け入れて和解し、アロアと結婚して画家となり、パトラッシュとともに末永く幸せに暮らしました、と極めて日本的な結末となります。