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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第47杯「明朗会計」

「良い居酒屋は家族経営である」というのがぼくの持論です。家族経営は仕入れの質を落とさずに経費を節約できるので、必然的に「明朗会計」となることも持論の根拠の1つです。この「明朗会計」は、我々弁護士にとっては耳の痛い話です。ぼくは弁護士も「明朗会計」を基準に選んだ方がハズレないと考えています。弁護士費用の定め方は弁護士によって様々であり、他の弁護士との比較が難しく、ある意味、不明朗会計の極みです。着手金と報酬金に分け、経済的利益を基準に金額を算定することが多いと思いますが、弁護士によっては、時間給を設定したり、事件が解決するまで月額〇〇円と「顧問料」的に設定したりする者もいます。また、離婚や認知等の非財産的事件のように経済的利益の算定ができない事件では固定額を設定する場合もあります。また、経済的利益を基準にその1割程度等と算出すると金額が常識を逸脱した金額になる場合があります。例えば破産事件で負債額を基準に弁護士費用の算定をすると、数百万円の高額な弁護士費用を支払って破産するという奇妙な現象が起きたりします。それだけの弁護士費用が支払えれば破産しなくても済むのではないでしょうか。時間給、顧問料、固定額で弁護士費用を決める場合はもちろん、着手金・成功報酬方式で弁護士費用を定める場合も、経済的利益の解釈次第で、極めて高額な弁護士費用を支払う結果となることがあるので注意が必要です。弁護士には、弁護士費用について説明を求めましょう。弁護士費用の算定がどんぶり勘定で、弁護士費用の金額の根拠を上手く説明できない弁護士は、依頼した事件の処理もどんぶりで、おおざっぱです。ミスも生じやすい状況となります。逆に弁護士費用の金額について合理的な説明ができる明朗会計の弁護士は、依頼した事件の処理も丁寧です。ミスが生じにくい堅実な弁護士である確率が高いです。ちなみに、売上の大きい弁護士が、人気があるとか能力が高いとは限りません。受任件数が少なくても、どんぶり勘定で高額の弁護士費用の支払いを受けている可能性があるからです。また、事件には勝ち筋、負け筋があり、弁護士の能力が高くても負けるときは負けます。弁護士の能力は外からみて分かりづらく、専門分野は自称であることも多いので、明朗会計で堅実な弁護士を選んだ方が間違いないと、ぼくは思います。