しらかば法律事務所TOPメディア旭川 連載記事 世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』 > 第42杯「家庭裁判所の案件について」

メディア旭川 連載記事
世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第42杯「家庭裁判所の案件について」

家庭裁判所は、親族関係と相続関係の事件を扱います。親族関係は夫婦間の紛争が多く、相続関係は兄弟姉妹間の紛争が多いと思います。夫婦間の紛争は、離婚事件が典型ですが、子どもが絡むと紛争は激烈なものとなります。相続は「争族」と言われるほど、以前は良好な関係にあった親族同士が激烈な争いを長期間に渡ってすることがあります。ただ、相続は親族間の財産分けの話なので、まだ、法の解釈・適用によって当事者が納得して解決できる余地が広いと思います。これに対して、子どもが絡んだ夫婦間の紛争は、親権・監護権の所在や、別居している子どもとの面会交流の問題など、ある意味、財産問題よりも切実なので、両当事者納得して解決できることは希有です。ぼくは、弁護士業で食べていますから、事件の依頼が来ないと困りますが、親権・監護権の獲得や、面会交流実施の依頼は、事件処理にもっともストレスを感じる案件です。裁判所が採用する解決基準の合理性が明らかではなく、依頼者に説明して納得を得ることが難しいからです。

まず、現在、子どもを養育している側が親権・監護権者として指定される、つまり、子どもを連れて別居した側(監護親)が親権・監護権を獲得できる運用のため、子どもを連れて行かれた側(非監護親)、特に非監護親が父親の場合は、離婚して親権・監護権を獲得することは、ほぼ絶望的な状況となります。次に、面会交流についても、監護親が面会交流を実施しない場合、裁判所が採用する面会交流の実施頻度は月1回2時間程度なので、突然、子どもに会えなくなってしまった非監護親にとっては、到底納得できない状況になります。少なくとも、現時点では、弁護士に依頼してもしなくても、連れて行った者勝ち、面会は実施出来るようになっても月1回2時間なので、非監護親、特に父親が弁護士に依頼する意味は、裁判所に一緒に行ってもらうことくらいになります。依頼者も何のためにカネを払って弁護士に依頼したのか分からないので、大いに不満でしょう。依頼された弁護士としても、合理性が明らかでない前記基準で親権者を指定し、面会交流を実施することを受け入れざるを得ず、それで納得してくれと説得する非常につらい役回りとなります。せめて、言いたいことを、弁護士を介さずに言うという意味で、弁護士に依頼しない方が良いかも知れません。