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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第38杯「ローカル弁護士人情派」

ぼくが弁護士として心がけていることは、地域密着・ローカルな弁護士であることと、人情に重きをおいて活動することです。端的に言うと旭川の人情派弁護士を目指しています。弁護士は大概、大都会で一旗挙げたい、グローバル・国際派と呼ばれたい、頭脳明晰の理論派と評価されたいと考えていると思います。だから大都市に弁護士は集中し、地方には弁護士が定着しません。旭川の人情派はこれと対極にある超少数派ですが、ぼくは全く気にしません。少数者の人権を擁護するために活動するいわゆる社会派の弁護士でも大都市で活動し、または活動したいと考える者が大半であり、地方に定着し、その地域に肩入れする弁護士は多くありません。ですから、ぼくは旭川の人情派であることに誇りをもっており、これがぼくの生きる道、他の弁護士に真似しないようにと言いたいくらいです。ところで、人情派弁護士は、法を無視して義理人情で活動するものではありません。ぼくは法と人情とは両立するものと考えています。法律は社会の常識を文章にしたものなので、法の解釈・適用の結果、常識外れの結論になることは理論上はありえないことなのです。もし、常識外れの結論になった場合は、その結論を導いた法の解釈・適用が誤っているということになります。例えば、故人を相続して多大な財産を得ても故人の葬儀費用を負担せず供養もしなくて良いとか、夫名義の預金(婚姻後に形成したもの)を持ち出して別居した妻から夫は預金を取り戻せないといった場合です。一般市民の常識からするとどうかと思いますが、法の解釈・適用上はそのようになります。ぼくは、人情派弁護士とは、義理人情という社会常識を法の解釈・適用で実現するべく活動する弁護士のことをいうと考えており、そのような事例を「法が定めているから仕方がない」「法とは時に冷酷なもの」と片付けてしまうのは、いかがなものかと思っています。このように言うことは簡単ですが、現実は厳しく、人情派の活動は実を結ばないことの方が多いです。それでも粘りを信条とし、ローカル弁護士人情派として活動します。