しらかば法律事務所TOPメディア旭川 連載記事 世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』 > 第33杯「マイナス思考」

メディア旭川 連載記事
世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第33杯「マイナス思考」

ぼくは、物事を悪い方向に考える典型的な「マイナス思考」の人間であることを自認しています。ですが、「マイナス思考」で良いと思っており、気に入っています。ぼくの受験していた司法試験は、天王山の論文式試験が7月下旬に行われ、結果発表が9月下旬にあったのですが、ぼくは、試験の結果待ちのときも不合格となることを想定して生活していました。そのため、不合格になっても比較的立ち直りが早く、来年の受験の準備を始めることができました。「マイナス思考」のため、悪い結果は想定内であり、切り替えが早くできたということです。言うのは簡単ですが、これができる人はそうはいません。ぼくよりずっと優秀な人がたくさんいましたが、不合格になって精神的に切れてしまって、勉強しなくなる、事実上、司法試験をあきらめる人がそれなりにいました(本当に優秀な人は精神的に切れる前に合格する。仮に切れて勉強しなくなっても合格する。)。これに対して、ぼくは「マイナス思考」のおかげで、精神的に切れることなく10年間も受験生活をおくり、結果的に合格することができました。また、不合格と思っていたところに合格するのですから、喜びも大きくなります。「マイナス思考」様様です。弁護士になってからも「マイナス思考」は変わっていません。法律相談をしていても、事態が悪い方向に進んだ場合を想定し、最悪の事態となった場合こうなると回答してしまうことがあり、相談者から「そのような弱気では困る」と叱られたり、「紛争の相手方の回し者ではないのか」と言われたこともあります。でも、最悪の事態を想定することで、依頼者が過度の期待をすることが少なくなりますし(見通しが良くない事件でも勝訴を確信している相談者は、マイナス思考のぼくには依頼しません。)、悪い結果が出てしまっても、パニックにならずに比較的冷静に対処できます。悪い結果が出たことで依頼者とトラブルになることはないとは言いませんが、少ない方だと思います。受験時代も今もそうですが、「マイナス思考」は「結果は成るようにしか成らない」「ダメで元々」と常に開き直った状態ですので、精神的に非常に楽です。良い結果を目指してベストを尽くすことに精力を傾けることができます。ぼくは、「マイナス思考」は「究極のプラス思考」と考えています。「マイナス思考」バンザイ!!