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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第31杯「運の良い人悪い人」

ぼくは、基本的に自分は運が良くない人間と思っています。ただ、最後の最後では良い結果が出ることもあり、土壇場ではツキがある人間かも知れません。司法試験を11回目でやっと合格しましたが、11回も受験していると、土壇場でツキがあって合格しても、あまり得をした気分にはなりません。ぼくが受験していたいわゆる旧司法試験は、不合格になると成績が通知されていて、後半の6年間は、次の年には合格できる位置にいましたので、普通に運があれば、もっと早く合格できていたと思っています。弁護士は人のマイナス部分ばかりを取り扱う仕事なので、運が悪い人によく会います。刑事被告人でも過失犯に問われる人は、運の悪い人が多いです。制限速度を遵守して運転していたのに、気づきにくい所から歩行者が出てきて轢いてしまい、当たりどころが悪くて亡くなったという事故を2回起こした刑事被告人もおりました。世の中不公平ですから、いい加減なことをやっていてもトラブルにならない人もいれば、正直に生きていてもトラブルに巻き込まれてしまう人もいます。ぼくは運が良い人間ではないと自覚していますので、運が良い人のまねはせず、ひたすら地道に生きています。車の運転には慎重を期しており、追い越し運転などはしません。それでも制限速度を17,8キロオーバーしてゴールド免許を剥奪されたことが2度あります。ゴールド免許剥奪で済んでおり、人身事故を起こしたことがないだけ運が良いと考えています。また、当たり前ですが裁判においては、運が良い人か否かで結論が左右されることはありません。もっとも、ぼくは、上告受理申し立てをして受理され、しかも最高裁判所で法廷が開かれ、最高裁判所で弁論し逆転して勝訴したという弁護士として極めて希有な体験をしています。この案件は、弁護士によって主張内容が異なってくる案件ではなく、たまたま最高裁判所がぼくの主張を採用してくれたものですので、弁護士の能力の問題ではなく、運の問題と言えるかも知れません。最高裁判所で逆転するということは、そこに行くまで敗訴しているということですので、諦めなかったことが勝因です。土壇場にならないとツキが回ってこないから、こんな体験もできたのでしょう。土壇場でツキが回ってくる人生は、あまり得をした気分にはなれませんが、結構、気に入っています。