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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第20杯「受信料の裁判」

「NHKから受信料を支払えと訴えられた、どうしたらよいか」という相談は、弁護士をやっていれば、必ず遭遇する相談です。「争っても勝ち目はないし、金額も小さいから支払ってはどうか」「裁判で争うと訴訟費用がかかり、赤字となる」などと回答する弁護士が多数派だと思います。しかし、ぼくは、テレビを設置している人から受信料という形で金を取ることはNHKだけに認められている特権であって釈然としないこと、また、テレビ設置すれば番組を視聴するしないにかかわらず、受信料が発生することは不合理だと思っていたので、争ってみる価値があると思い、依頼者も「費用が、それほどかからないのなら(裁判を)やりたい」との意向だったので、ほぼ手弁当で受任しました。訴額が10万円程度でしたので、旭川簡易裁判所の管轄で、簡裁ではあっさり敗訴しました。ですが、ここであきらめずに旭川地方裁判所に控訴したところ、受信料の不発生は認められませんでしたが、受信料は発生してから5年で消滅する(消滅時効期間5年)との判決で、受信料の一部は消滅しているから支払わなくて良いという判断が示され、一部勝訴しました。NHK受信料の消滅時効については、地方裁判所のレベルでは旭川地方裁判所が全国で初めて判断した関係で、NHK以外のマスコミで随分報道されました。NHKは札幌高等裁判所に上告しましたが、判断は変わらず確定しています。この事件はたまたま全国初の判断だったため、世間の関心が高い最新判例を扱う法律雑誌にも掲載された関係で、強く印象に残っています。弁護士業は、人間の負の部分ばかりを扱うので、ストレスが溜まります。たまに、NHK受信料判決のような良い結果をもらってストレス発散する必要がありますが、そうそう良い結果は得られないので、他の方法でストレス発散する必要があります。ぼくの場合は、居酒屋のはしごの他、野球の練習・観戦が中心となります。旭川弁護士会にも野球チームがあり、平成19年ころから対外試合(といっても相手チームも法曹関係ですが)をしています。当時は、1試合で内野ゴロでのアウトが1つも取れないレベルで、三振とフライでしかアウトを取れませんでした。それでも最初の試合で奇跡的に勝ちましたが、その後は平成22年まで丸3年間負け続け、かえってストレスが溜まるようなチーム状態でした。