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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第15杯「弁護士の仕事 想像と現実」

ぼくが弁護士登録してから3年間位は、自己破産事件がうなぎ登りに増え、旭川地裁本庁管内(上川中部・南部、北空知)で、ピーク時の平成16年度は年間1600件以上の自己破産が申し立てられました。管内人口が48万人位でしたので、平成16年度は管内の300人に1人が自己破産したことになります。これが、前後数年間続いていましたので、平成13年~平成18年の間に管内の50人に1人が破産していたことになります。管内弁護士数も30人台でしたので、弁護士業務の大半が自己破産等の債務整理案件でした。正直、債務整理をするために弁護士になったわけではなかったので、想像と現実のギャップが大きかった。弁護士業務のイメージとしては、報道やテレビドラマで扱われることが多い刑事事件の印象が強いと思います。ぼく自身もそうでした。ただ、テレビドラマのように無罪判決がビシビシ出るという現状にはありません。旭川地裁本庁では、平成16年12月に無罪判決が言い渡されていますが、先輩弁護士によると、それまで20年以上、無罪判決がなかったそうです。その後、平成17年4月にも無罪判決が言い渡されていますが、それ以降は、無罪判決はありません。すなわち、旭川地裁本庁では、平成に入ってからは無罪判決が2件しかないということです。刑事事件は年間平均で300件以上はありますので、平成に入ってから約8000件が起訴され、そのうち無罪は2件ということです(確率0.04%)。平成17年4月の無罪判決は、何を隠そう、ぼくが弁護人を務めておりました。交通事故案件で、略式裁判で罰金判決が言い渡されていた段階で、異議を申し立てて、通常の裁判手続に移行した案件です。平成15年9月に起訴されていますので、無罪判決まで1年7か月かかりました。検察が控訴を断念したので無罪で確定しています。無罪判決をもらった弁護人の気分は、とにかく「うれしい」です。弁護士業務で結果を出して、最もうれしかったことの一つです。無罪判決をもらった日に、記念にバランタインの18年を買ってきて、1人で飲みました。そのときに全部飲んでしまわずにボトル3分の2位を取っておき、何かの節目で飲もうと思っているうちに、10年が経過しました。18年ものは28年ものとなり、熟成が進んでおいしくなっていることと思います。